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平野美宇が明かす団体銀の舞台裏…目指した「隙のない卓球」、代名詞の“連続攻撃”よりも重視したこととは?
posted2021/08/24 17:06
text by
高樹ミナMina Takagi
photograph by
Takuya Matsunaga/JMPA
東京五輪女子団体で銀メダルに輝いた日本代表チーム。その一員としてダブルス、シングルスの両方で活躍した平野美宇の武器といえば両ハンドドライブによる連続攻撃だ。
特にクロス方向に放つ超高速バックハンドドライブは強烈で、打球点の早さ、球威、角度ともに女子選手の中で群を抜いている。このバックハンドを軸にした連続攻撃が東京五輪で火を噴き日本中を魅了した。
畳みかけるような卓球のラリーは見応えがある。
いわば派手なプレーで、平野がラリー戦を制した試合の記事にも「両ハンドドライブ炸裂」や「ハリケーン・ヒラノ」といったインパクトのあるフレーズが躍る。また、連続攻撃を得点源と考える平野自身も五輪前に「連続で強打ができるよう体の使い方を練習してきた」と話していた。
連続攻撃でポイントを取れるときの彼女は調子がいい。それが一般的な解釈だ。
だが、本人の見解はちょっと違うようで、五輪直後に行ったインタビューで平野は「それもありますけど、それよりも……」と切り出した。
平野が目指した「隙のない卓球」
平野の調子を見極めるプレーに話が及んだのは台上技術の話題になったときだった。
東京五輪での彼女は特に無敗で勝ち進んだ準決勝までレシーブのストップやツッツキ、フリックといった台上技術の精度が高く極めてミスが少なかった。
ストップとは相手を前に寄せるために短いボールを送る打法。ツッツキは相手の下回転のボールを下回転で返球する打法。フリックは短いボールを払うように返球する打法で、いずれも台上プレー(略して台上)と呼ばれる。
「台上の技術はまんべんなく練習して、いつもよりも完璧に近いぐらいの仕上がりでした。私は頭で覚えるよりも体で覚えるのが得意な方なので、体に染みつくぐらい細かい技術の練習をして、オリンピック本番で隙のない卓球を目指しました」
その成果が表れたのは女子団体戦で最初の山場となった準々決勝の台湾戦。3番のシングルスで平野が陳思羽(チェン・ズーユ)に勝った一戦だ。