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侍ジャパン“笑わせた”栗原陵矢「監督の赤いパンツのようにアツく行きましょう」 “まさかの”4位ホークスのカギを握る25歳
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byJMPA
posted2021/08/13 17:03
アメリカとの決勝戦直前、日の丸のハチマキを巻いて気合を入れた栗原陵矢(25歳)
ふざける時はとことん全力で。だけど、ひとたび戦いのスイッチが入れば試合に限りなく集中する。試合の中ではどんな困難があっても、決してひるまず堂々と向き合う。
1年前はまだ若手のホープに過ぎなかった。緊張で頭が真っ白になったこともあるし、24打席連続無安打という深いトンネルでもがいた時期もあった。首脳陣の励ましに助けられ、先輩に引っ張られていた男が、日本シリーズではMVPを獲り、今季は押しも押されもせぬホークスの中心選手となり、そして立派な侍になった。
本当に逞しく、順調な成長を見せてくれている。
今シーズンは昨年に比べれば、安定感がまるで違う。昨季は全120試合中118試合に出場したが、打率.243にとどまった。今季は前半戦88試合にフル出場して打率.278をマークしている。
「今年は特に打率にはこだわっていきたいと思っています。自分の中では3割という目標を持って、シーズンに入る前から取り組んできました。ただ、打てる時と打てない時は必ずあるので、打っても打てなくても考えすぎないようにしています。1試合毎に対戦する投手は替わるわけだし、自分のコンディションだって同じじゃない。その日のベストの状態で臨むことが大事だと思っています」
「もともとは鏡の前でやっていましたが…」
その日の事は翌日には持ち込まない。
今年、栗原は試合後のグラウンドに一人、バットを持ってたびたび現れた。ベンチを出るとそのまま外野へ向かって、フェンス沿いを、素振りをしながら進んでいく。ライトからレフトへ。そしてレフトからライトへ。
「今日打った球、打てなかった球を思い返しながら、自分の考えを入れて『ならば、こうしたらいいんだ』と思うことを確認しながら振っています。もともとは鏡の前でやっていましたが、狭い空間でやるよりも広い場所で大っきく、ゆったりと振りたいというのもありますし、自分自身があまり形を決めて振るバッターではないので。自分の形にこだわるより、ピッチャーの球に合わせて振っていくタイプ。それもあって、外で振るようにしています」
また、ヒットの出ない時期の考え方として四球を選ぶことをより強く意識した。5月は月間打率.311と好調だったが、6月は.226と低迷した。しかし、四球数は後者の方が多かった。
「調子が悪い中でも四球を1つでも2つでも取っていけば打率の変化も小さくなる。そうやって3割に近づいていきたいと思っています」
柳田の次の打順でハマるか?
五輪中断期間はもう終わり、13日からペナントレースが再開される。ホークスは前半戦4位だった。攻撃力の物足りなさがチームの不振に直結していた。