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「ドラフト候補の前川右京らをどう抑える?」“大阪桐蔭を2度破った”優勝候補・智弁学園に仕掛けた奇策《夏の甲子園》
posted2021/08/11 17:02
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph by
KYODO
チャレンジは失敗に終わった。
第2日目の第1試合はドラフト候補の前川右京を擁する優勝候補・智弁学園(奈良)が登場。対する倉敷商(岡山)はジャイアントキリングを狙って策を講じたものの、うまくはまらなかった。
倉敷商が講じたのは先発にエースのサウスポー・永野司をたてるのではなく、右腕の三宅貫太郎を抜擢したことだ。
「エースの永野一人で9イニングを投げるという選択もありましたけど、智弁打線には力がある。そのため、まず先発は緩急を使えるピッチャーを立てようと考えました。それで三宅を先発にしました」
倉敷商の梶山和洋監督は智弁学園打線の脅威を考えての策だったと明かしている。
無理もない。智弁学園は2019年の夏、昨夏の甲子園交流大会、そしてこの春を経験している今大会の優勝候補筆頭格。3番を打つスラッガーの前川、エースの西村王雅、背番号「10」の小畠一心は1年時から試合に出場していた。現チームは大阪桐蔭を2度破るなど経験・実績とも豊富なのだ。
4回の“ちょっとした隙”
先発した三宅は岡山県大会で3試合に登板。ストレートをコーナーに投げながら多彩な変化球を駆使していく。最速は130キロ超だが、スライダー、シュート、スローカーブ、チェンジアップを投げ分けることで、ストレートのキレを見せていくタイプだ。
立ち上がりは上々だった。
1回は前川に一塁内野安打を浴びたものの、4番の山下陽輔はサードゴロ。2回は三者凡退に抑えた。3回は得点圏に走者を進められるも、1、2番打者にまともなスイングをさせない完璧な投球でともに平凡なフライに打ち取っている。
序盤は完全に倉敷商の策がうまくいっている風であった。しかし4回、ちょっとした隙を智弁学園に攻められる。