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歴史的なタブーを犯してエバートンの監督に…ベニテスは複雑な感情を抱くエバトニアンを味方につけられるか 

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粕谷秀樹

粕谷秀樹Hideki Kasuya

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posted2021/08/05 17:01

歴史的なタブーを犯してエバートンの監督に…ベニテスは複雑な感情を抱くエバトニアンを味方につけられるか<Number Web> photograph by Getty Images

エバートンの監督に就任したベニテス。期待に応える結果を示し、エバトニアンの心を掴めるか

 また、中盤センターにアラン、アブドゥライェ・ドゥクレが構えているため、メンバーとしては大崩れする心配はない。

 ただ、ピックフォードは好不調の波が激しすぎる。スーパーセーブでエバトニアンを喜ばせた次の瞬間、致命的エラーで失望のどん底に突き落とす。リーグ屈指のキック力を持っているにもかかわらず、コントロールせず距離を出すことばかり考えている。721分無失点というイングランド新記録を樹立したGKとはいえ、ベニテスの信頼を得られるのか、はなはだ疑問ではある。

 さらに既存戦力のドミニク・キャルバート・ルーウィンとリシャルリソンに加え、クリスタルパレスからアンドロス・タウンゼント、レバークーゼンからデマーレイ・グレイも獲得した攻撃陣は一見豪華だが、質量ともに長いシーズンを闘い抜くには不足している。

バカげた競合を避け一日も早く体制を整えるべき

 ここからは、ブランズFDが得意とする分野だ。PSVのディレクターを務めていた当時、彼はジョルジニオ・ワイナルドゥム(パリSG)、メンフィス・デパイ(バルセロナ)、イルビング・ロサーノ、ドリエス・メルテンス(ともにナポリ)、ケビン・ストロートマン(カリアリ)といった有望な若手を次々に発掘。その後、彼らを売却することによって、2億ユーロ(約260億円)もの収益をあげ、経済的に死に体だったPSVを黒字転換した敏腕である。

 エバートンに加入した2018-19シーズン以降も、リシャルリソン、ディニュ、アンドレ・ゴメスの獲得に貢献し、ミナの契約解除金としてバルセロナから1億ユーロ(約130億円)という法外な額を突きつけられたときも粘り強く、それでいて強気の姿勢を崩さず、3000万ユーロ(約39億円)前後で交渉をまとめた経緯がある。

 いま、ブランズとベニテスは迅速に、そして密度の濃いミーティングを重ね、新戦力を発掘しなくてはならない。メディアが噂しているような選手でも、EUROで活躍した者でもなく、より実践的なタイプが望まれる。ブランズが獲得してきた選手をみても、知名度は二の次だ。バカげた競合を避け、一日も早く体制を整えるべきだろう。

 多くのサポーターが複雑な心境を抱きながら、2021-22シーズンのエバートンはベニテスに率いられることになった。「最初の2~3カ月は様子を見て」などと、悠長には構えていられない。

 エバトニアンを味方につけられるのか、あるいはネガティブな感情が上まわるのか。ベニテスの難しい舵取りは、現地時間8月14日のサウサンプトン戦(ホーム)から始まる。

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