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歴史的なタブーを犯してエバートンの監督に…ベニテスは複雑な感情を抱くエバトニアンを味方につけられるか
posted2021/08/05 17:01
text by
粕谷秀樹Hideki Kasuya
photograph by
Getty Images
まさに“青天の霹靂”だった。
6月1日、フットボール界が目と耳を疑った。
レアル・マドリーが、エバートンからカルロ・アンチェロッティ監督を引き抜いたのである。ジネディーヌ・ジダン退任後の有力候補には一切挙がらず、エバートンで2シーズン目を迎えるに違いないと考えられていただけに、驚きの人選だった。
しかもアンチェロッティは、エバートンで受け取っていた年俸の25%減に値する600万ユーロ(約8億円)で新監督を引き受け、納税不履行者であることまでが公にされている。プライベートが荒らされても、R・マドリーに戻りたかったということか。
6年間監督を務めたリバプールとはローカルライバル
一方、エバートンは慌てた。
アンチェロッティの退任は寝耳に水。ビル・ケンライト会長、筆頭株主のファハド・モシリ、フットボール・ディレクターのマルセル・ブランズといった上層部は混乱に陥ったという。夏のメインテーマは戦力増強であり、新監督探しではなかったからだ。
アンチェロッティが去った後、2020-21シーズン限りでウォルバーハンプトンを退任したヌーノ・エスピリト・サント、ボーンマスの元監督エディー・ハウなど、何人か候補が取り沙汰された。一部ではスティーブン・ジェラードが有力候補ともいわれていた。
ジェラードの就任は眉唾が過ぎる。スコットランドのレンジャーズで結果を出しているとはいえ、現役当時の彼はリバプールの象徴だった。どう考えても“タブー”である。ジェラードがテクニカルエリアでエバートンを指示するマージーサイドダービーは、太陽が西から昇っても考えづらい。
その後、サントはトッテナムの新監督に就任し、ハウは在野でフットボールの研究を優先。エバートンの新監督は宙ぶらりんになるかとも思われた。
その頃、ラファエル・ベニテスの名前がいくつかのメディアで噂されていた。
本人がプレミアリーグ復帰を熱望していること、ご家族がリバプール市の郊外に住んでいること、なおかつ彼のキャリアを考慮するとエバートンの新監督にふさわしいのではないか、との指摘があちらこちらから聞こえてきた。