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狩野舞子「代表選手だけでなく、組織も世界基準に」“もっと見ていたかった”ブラジル戦にあった未来へのヒント
text by
狩野舞子Maiko Kano
photograph byAP/AFLO
posted2021/08/04 11:06
準々決勝でブラジルに敗れたバレーボール男子日本代表。東京五輪の経験を3年後のパリ五輪へつなげていく
試合後、石川選手は涙を流していました。そしてインタビューの第一声は「とにかく悔しいです」。相手がブラジルでも本気で勝ちにいった。だからこそ、溢れ出た言葉と涙なのではないでしょうか。
何より、素晴らしかったのは石川選手が続けて発した言葉です。
「最高のチームだったと思います。今回負けてしまいましたが、今、僕たちの持っているものはすべてこのコートに出すことができたのかな、と思います」
この五輪に臨むにあたり、石川選手は大会が開催されることへの感謝を述べていました。アスリートとしてとても幸せなことだからこそ「恩返しの大会にしたい」。その一番の恩返しは勝利。それ以上に「やってきたことを出し切る」ということです。
だからこそ、あの涙は後悔の涙ではなく、世界の壁はまだまだ厚いと感じた悔しさや、まだまだもっと強くなる、という決意の涙だったのではないかと思うのです。
目標としていた予選リーグ突破を果たし、ベスト8進出を果たした日本代表。その結果以上に、ブラジルやポーランドという世界の強豪に対しても、この5年で積み重ねてきたものを発揮し、見ていて楽しい「ワクワクするバレーボール」を見せてくれました。正直に言うと、期待を遥かに上回る内容、結果だったと思います。
それぞれが自分の役割に徹し、たとえそれが100%うまくいかなかったとしても、最低限ここは果たす、という姿勢が常に見られた。たとえミスが出たとしても、消極的なものではなく、意図が見えるミスが多かったのも印象に残ります。相手のワンサイドゲームになることもない。間違いなく成長した日本男子バレーを多くの方々に見せる機会になりました。
とはいえ、もちろんここで満足する選手は誰もいないはずです。