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女子レスラーからアイドルへ…黒崎セラ(17)と沙弥(37)がステージ上で続ける“闘い”とは「形は違っても生き様を見せたい」
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2021/07/29 11:01
レスラー「YUMI」からアイドルへと華麗なる変身を遂げた黒崎セラ
「“元女子プロレスラー”というのは一つの武器」
プロレスの経験が活きたのは、現場での機転だという。誰かが歌割りやダンスの立ち位置を間違えたら、咄嗟にカバーする。そういうところも頼りにされているようだ。オトロマは他に仕事をしているメンバーもいるから、毎回、全員揃ってライブができるわけではない。そんな時に沙弥の臨機応変ぶりが際立つ。
「アイドルは思った以上に大変でしたね。歌と踊りを覚えちゃえば大丈夫ってわけじゃなかった(苦笑)。ステージの大きさもお客さんの数も空気感も毎回違うんですよ、当たり前ですけど。対バンイベントに出ると、私たちを知らない人もたくさんいる。その中でどうやって顔と名前を覚えてもらうか。アイドルになったからには何か残さないとやめられないと思ってるんですけど、でもどうすればいいか。もの凄い数のグループがありますからね、今。本当に考えなくちゃいけないです。そこで“元女子プロレスラー”というのは一つの武器ではあるなと。自己紹介でそれを言うと、スマホから目を離してこっち見てくれる人もいますから」
差し入れは酸素スプレー、アンコールはチョコラBBで乾杯
活動を始めるにあたって調べてみると“アラフォーアイドル”や“大人アイドル”のグループも(特に地方に)多いことが分かった。つまり、それだけでは売りにならないということだ。オトロマは「大の大人がバカっぽい」をキャッチフレーズにしており同名の曲もあるのだが、基本的には正攻法。ストレートでエネルギッシュな曲が多い。
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「生歌がポリシーでダンスも割と激しいんですよ。“もうトシだから”を言い訳にしないで頑張るのがオトロマ。まあライブの途中で息が切れちゃうんですけど(笑)、それも全力でやってる証拠ということで」
ファンからの差し入れは酸素スプレー、アンコールはチョコラBBで乾杯といったネタもあるものの「この歳でアイドルなんて変でしょ」という打ち出し方はしない。むしろ「いくつになっても遅くない。なりたいものになろう、やりたいことをやろう」というスタンスだ。
「アラフォーアイドルが増えているのも分かる気がします。昔、夢見てたけど諦めたことをやってみたいって、大人になって思う人がけっこういるんでしょうね。お子さんを産んで手が離れて余裕ができたという人もいるかも。あとはコロナですよね。“自分が本当にやりたいのは何だろう”って、やっぱりみんな考えたと思うんですよ」