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〈出産・育児と並行してブラジルで男子柔道を指導〉藤井裕子監督と愛弟子が涙の銅メダル… 2人に聞く“阿部一二三らとの激闘と信頼関係”
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byAgencia EFE/AFLO
posted2021/07/28 11:03
藤井裕子監督のもとで銅メダルを獲得したカルグニン。ともに涙を流した
藤井監督:カルグニンを含め、全員、とてもいい調整ができたと思います。
――浜松で宿泊したホテルの従業員数人のウイルス感染が発覚し、隔離されました。
藤井監督:ホテルの従業員と私たちの動線が全く別だったので、特に影響はなかったです。
阿部一二三にも「これなら勝てる」と思った瞬間が
――藤井監督、カルグニンの3位決定戦までの5試合を振り返ってください。
藤井監督:今日の彼は非常に集中していて、大きなことをやってくれそうな予感がありました。対戦相手が何をやってくるかは大体わかっていたし、彼と相性が良さそうな選手が多かったのもラッキーでした。初戦はかなり苦戦したが、延長戦にもつれ込みながら一本勝ち。これで落ち着いたと思います。次の試合の相手も手ごわかったが、しっかり勝ち切りました。
準々決勝の相手は世界ランキング1位のマヌエル・ロンバルド(イタリア)でしたが、それまでの試合を見ているとあまり調子が良くなさそうで、勝つべくして勝ちました。
準決勝の阿部一二三選手との対戦も、序盤はかなりいい出来で、「これなら勝てる」という気がしました。残念ながら投げを食らってしまいましたが、試合内容は決して悪くなかったです。本人は悔しがっていましたが、「次があるよ。気を取り直していこう」と声をかけたら、集中力を取り戻したようでした。
3位決定戦の前、「どういう試合をしたい?」と聞いたら「積極的に行きたい」ということでした。「自分のスタイルを貫いたら大丈夫だから」と伝えたのですが、よく頑張ってくれました。
――カルグニン選手、これまで藤井監督から学んだことは?
カルグニン:技術的な部分はもちろんだが、何か問題があっても決して諦めず、地道な努力を続けること、練習でも試合でも常に最大限の集中力を保つことを教えてもらった。
裕子先生との素晴らしい出会いがあり、柔道の母国日本で開催された五輪で表彰台に上がることができて、これまでの人生で最高の日になった。
――カルグニン選手は、右胸に漢字で「家族」というタトゥーを入れていますね。