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〈出産・育児と並行してブラジルで男子柔道を指導〉藤井裕子監督と愛弟子が涙の銅メダル… 2人に聞く“阿部一二三らとの激闘と信頼関係” 

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沢田啓明

沢田啓明Hiroaki Sawada

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photograph byAgencia EFE/AFLO

posted2021/07/28 11:03

〈出産・育児と並行してブラジルで男子柔道を指導〉藤井裕子監督と愛弟子が涙の銅メダル… 2人に聞く“阿部一二三らとの激闘と信頼関係”<Number Web> photograph by Agencia EFE/AFLO

藤井裕子監督のもとで銅メダルを獲得したカルグニン。ともに涙を流した

裕子先生にはとてもお世話になり、助けられた

カルグニン:裕子先生には、これまでとてもお世話になり、助けられてきた。

 思い出すのは、2018年のイタリア合宿だ。僕はひどく調子が悪く、思うような練習ができなかった。乱取りをしても、投げられてばかり。完全に自信を失い、トイレに籠って頭を抱えた。「もうダメかな」、「柔道をやめようか」とも思った。

 落ち込んでいる僕を見て、裕子先生が「絶対に諦めちゃダメ。もっともっと練習しよう」と励ましてくれた。

 自分で自分のことをダメだと思っているのに、この人は僕を信じ、一所懸命に励ましてくれる。なぜなのだろう、と不思議だった。でも、先生の励ましのお陰で「また頑張ろう」と思い直し、地道に練習を積んできた。

藤井監督:あのときのことは、良く覚えています。あれ以外にも、彼にはスランプやピンチが何度もありました。

 でも、彼はよく練習するし、勝負勘が素晴らしい。まだ若いし、今後、ブラジル柔道にとって貴重な人材になるという確信がありました。だから、「彼のことをどこまでも信じよう」、「彼を腐らせてはならない」と思って接してきました。本当によくやってくれました。

5月にはコロナ感染で落ち込んでいたけれど

――今年5月、新型コロナウイルスに感染し、6月にブダペスト(ハンガリー)で行なわれた世界選手権に出場できませんでした。この大会でポイントを稼ぎ、ランキングを上げて五輪でのシード権を獲得することもかないませんでした(注:現在の世界ランキングは13位で、五輪参加選手の中では10番目。有力なメダル候補ではなかった)。

カルグニン:5月に倦怠感がひどくなり、匂いを感じなくなった。PCR検査を受けたら、陽性。かなりのショックを受けたし、練習を再開できるまで3週間かかったのも痛かった。

藤井監督:確かに、かなり落ち込み、苦しんでいました。でも、五輪直前に大きな大会に参加するのは心身への負担が大きいという一面もあります。彼の場合、世界選手権に出場できなかったのが逆に幸いしたのかもしれないです。

――ブラジル柔道代表の第一陣は、7月10日に来日し、浜松で事前合宿を行ないました。

【次ページ】 阿部一二三にも「これなら勝てる」と思った瞬間が

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