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予選敗退の瀬戸大也はどこで“間違った”のか 追い抜かれたとき「自分は追いかけなくていいやと思っていました」
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byGetty Images
posted2021/07/25 11:45
400m個人メドレー予選で途中まで先頭を泳いでいた瀬戸大也だったが自由形で失速。まさかの敗退に本人も驚きを隠さなかった
「自分は追いかけなくていいやと思っていました」
瀬戸自身、予選から決勝の進め方については苦い思い出がある。
銅メダルを獲得したリオデジャネイロ五輪400m個人メドレーでは、予選は4分8秒47のタイム、全体2位で決勝に進んだ。だが決勝では、4分9秒71と予選からタイムを落として銅メダルの成績で競技を終えた。
「予選から行き過ぎたこと、予選から決勝までに体力が回復しきらなかったことが反省点です」
リオのすべてのレースを終えたあと、400m個人メドレーをこう分析した。
「今度は繰り返さないようにしたいです」
とも語っていた。
5年前の記憶が残っていたから、体力を残したかった。それでも予選は通ると考えていた。自由形で追い抜いて先行する選手たちにこう思ったという。
「頑張ってるなって。自分は追いかけなくていいやと思っていました」
自身の想定を信じ、他者の存在が目に入らなくなっていた。
実戦の感覚が薄れていたのか
実戦の感覚不足も影響したか。
瀬戸はこれまで、同じ趣旨の話を何度かしている。例えば、2013年には「大会にどんどん出る中で調子をつかんでいく、あげていくタイプだと思います。感覚もつかめてくる」と語り、2019年、日本選手権の前にも「たくさん泳ぐことが自分にはプラスになります」と話した。
もともと1つの大会で複数種目に出て、強化を重視する時期には、多くの大会に出場して調子を上げていくのがパターンだ。
昨年、オリンピックが1年延期になったあと、不祥事もあって実戦の機会は計画していた数よりも減った。
6月から長野県内で泳ぎこみ、調子を取り戻してきたと手ごたえを得ていた。
読み違えはあったにしても、あるいはレース展開の読みも含め、実戦の感覚が薄れていた影響も考えられる。
いずれにせよ、痛恨のレースだった。