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郵便局員が今やWWEに 異色のキャリアを歩み続ける41歳鈴木秀樹、米リングネームが「Hachiman」に決定…その由来は?
text by
高木圭介Keisuke Takagi
photograph by2021 WWE, Inc.
posted2021/07/19 17:03
WWEのリングに初登場した鈴木秀樹(右)。新軍団「ダイヤモンド・マイン」のメンバーと、NXTクルーザー級王者・KUSHIDAを取り囲んだ ©︎2021 WWE, Inc. All Rights Reserved.
産業革命以降から20世紀中頃にかけて、エネルギー資源の中心であった石炭が「黒いダイヤモンド」と称されていた時代があった。その名残りで「ダイヤモンド・マイン」という単語には、まさに炭鉱その物を指す意味も含まれている。
ハチマンこと鈴木は、師匠ビル・ロビンソンから受け継いだ英国伝統のCACC(キャッチ・アズ・キャッチ・キャン)由来のプロレス技術を買われてWWEのコーチに就任した背景がある。
そのCACCは、現在のプロレスの原型(フォールだけでなく、ギブアップを奪う関節技も含む部分)、近代五輪に採用されたフリースタイルの原型(伝統のグレコローマンと違い、全身のどこを攻撃してもOKという部分)に化けたことで、ほぼ表舞台から姿を消して久しい。そんなCACCが炭鉱労働者たちの賭けレスリング、賞金試合に採用されることで大きく普及・発展したのが、炭鉱産業で栄えた18世紀末からの英ランカシャー地方だった。
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そんなプロレス……いや、レスリングその物の歴史を踏まえるに、鈴木をボス的なポジションに据えての「ダイヤモンド・マイン」という命名は、英国伝統のレスリング技術を忍ばせつつの、腕に自慢の武闘派集団というエッセンスが見え隠れするではないか?
往時のプロレス中継で、カール・ゴッチやロビンソンをはじめ、欧州系の実力派たちのソレが「ランカシャー・スタイル」と呼称されていたのと同じテイストだ。
現在、NXT首脳陣にはウィリアム・リーガル(ロード・スティーブン・リーガル)、フィット・フィンレー(デーブ・フィンレー)、ロビー・ブルックサイドら欧州系の名選手が数多いことからも、そんな匂いを裏テーマとして感じ取れる。