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「もうあなたじゃないよ、オレなんだよ」“裏切り”の果てに、新三冠王者ジェイク・リーは“恩人”諏訪魔を超えるか?
posted2021/07/18 11:00
text by
原悦生Essei Hara
photograph by
Essei Hara
「諏訪魔、オレとあんたの物語は終わったわけじゃないんだ。あんたとのタイトルマッチに勝たないとオレの物語は先に進まない。待っていてやるよ。待っていてやるぞ、諏訪魔。早くとは言ったけれど、万全の状態で戻って来い。コロナだけじゃない。痛いところいっぱいあるんだろう。しっかり治して来いよ、諏訪魔。お客さんが待っているぞ」
6月26日、大田区総合体育館で全日本プロレスの三冠ヘビー級の新王者になったジェイク・リーは口を開いた。
諏訪魔がコロナに感染してベルトを返上
本来、リーが三冠王者の諏訪魔に挑む試合は5月16日、大田区総合体育館でスケジュールされていたが、東京都の緊急事態宣言延長で会場が使用できなくなってしまい延期された。全日本プロレスは来年50周年を迎える。「三冠統一の地から50周年への飛翔」と銘打たれた大会は40日後に同所で開催されることになった。
だが、その前に不測の事態がまた全日本プロレスを襲う。諏訪魔が新型コロナウイルスに感染して欠場、ベルトを返上するという事件が起きたのだ。
1989年4月18日、旧・大田区体育館でインターナショナル・ヘビー級王者だったジャンボ鶴田がユナイテッド・ナショナル(UN)とPWFヘビー級王座を持っていたスタン・ハンセンを倒して初めて3つのタイトルを統一した。力道山からジャイアント馬場に受け継がれたインターナショナル、日本プロレス時代のアントニオ猪木に代表されるUN、そして全日本プロレスを旗揚げした馬場のPWFの3つを集めたのが三冠統一王座だった。
当時、3つのタイトルをまとめることは至難の業とされていて、4度行われた統一戦には、天龍源一郎vsブルーザー・ブロディもあった。そして鶴田はハンセンとの3度目の戦いで統一という大事をやってのけた。
その後、統一されたこの王座は解体されることなく今日に至っている。三冠戦では鶴田vs天龍という名勝負も生まれた。鶴田vs三沢光晴、三沢vs川田利明。三冠vs.IWGPという実現不可能と思われていたカードまで行われ、全日本の所属だった小島聡が4本のベルトを同時に巻いた。