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《一周忌》「BMXを本当に日本で有名にしてくれた」三浦春馬と“共演”したプロライダー・米田大輔ダニエルが語る“五輪への思い”とドラマ撮影秘話
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byYumiko Yanai
posted2021/07/18 11:01
BMX大会MCの第一人者。ドラマ「ラスト・シンデレラ」のロケ地にもなった鵠沼海浜スケートパークは米田さんのホームパークだ
「僕がBMXのプロになったのは、まだあまりみんなBMXを知らなかった時代。春馬くんが演じてくれたことで、それ以後は僕も僕以外のライダーも『ラスト・シンデレラのあの競技ね』と分かってもらえるようになりました」
運動神経の良い三浦さんは、打ち合わせで初めて会ったその場で試しにBMXに乗ると、すぐに「バニーホップ(平らな場所で前輪を浮かせ、そのまま両輪でジャンプする基本技)」をマスターしたそうだ。
約3カ月間に6、7回ほど行なった収録では、鵠沼海浜公園スケートパークも使われた。
「スタッフの方から最初に聞いていたのが『春馬くんはどんな役でも真剣にやる人。その役になり切る、のめり込む人です』ということでした」
「『ここからの俺を見てほしいな!!』と……」
BMXは短期間の練習で技を習得するのは実質不可能なため、米田さんは指導とスタント役の両方を行なったが、三浦さんは「できるかぎり行けるところは俺、自分でやりたいんだよね」と話していた。米田さんと三浦さんは「(主人公の)佐伯広斗という役を一緒に演じよう」と力を合わせて取り組んだ。
BMXでは初心者が転ぶ時に顔から突っ込んでしまうことが多く、米田さんはいつも「春馬くんの顔にけがをさせてはいけない」と、はらはらしながら見ていたという。
そんなある日、収録に訪れた三浦さんのひじを見ると、大きな擦り傷があった。
「肘、やばいね。どうしたの?」
「練習したんだけどさ、こけちゃったー(笑)」
笑って言う三浦さんを見て、「プライベートでも練習してくれていることを知って、やっぱり本気で練習してくれているんだと、うれしかったです」という。
2人は年齢が1歳違いということで会話はフランク。米田さんが「春馬くんのこれまでの作品も見たいなー!」と言うと、「照れるから前のものは見なくていいよー(笑)。過去の作品もいいけど、ここからの俺を見てほしいな!!」と返ってきた。前向きな輝きにあふれていた。
三浦春馬さんの一周忌に思うこと
五輪開幕まであと5日である7月18日は、三浦さんの一周忌になる。
「ラスト・シンデレラの後、BMXの認知度は飛躍的に上がりました。BMXを本当に日本で有名にしてくれたのがラスト・シンデレラの春馬くんだった。ライダーとしての僕も認知してもらえた。毎日、本当に感謝しています」
訃報を聞いた1年前はショックのあまり何もできなかったという米田さんだが、今年はドラマ撮影時に三浦さんが乗っていた自転車をピカピカに磨き、その自転車でパークを走ってみようと思っている。
「2人でガンガン乗ったなぁとか。傷だらけになったよなぁとか。春馬くんもこのチャリでこけたし、自分もこけた。二人の色んな思いが詰まった、このバイクに乗り続けることに、意味があると思っています」
東京五輪では、テレビでBMXを初めて見る人たちにBMXの魅力が伝わればいいと米田さんは思っている。
「BMXをメジャーにすることがお前の夢だろ?」
ラスト・シンデレラでの台詞が実現する時が来ることを、米田さんは願っている。