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【新馬戦】アーモンドアイのような“特別な走り”? 2歳馬・ダノンスコーピオンに期待がかかる“偉業”とは
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph bySankei Shinbun
posted2021/07/09 17:00
川田将雅を背に、デビュー戦を見事勝利したダノンスコーピオン
夢を追いかけるのにふさわしいプロフィールの馬
新ひだか町のケイアイファームの生産。ダノンザキッドと同じく、「ダノン」の冠号で知られるダノックスの所有馬で、しかも、父は安田調教師が管理したロードカナロア。母もカナダで年度代表馬になった名牝という、夢を追いかけるのにふさわしいプロフィールの馬だ。
前日の雨の影響で馬場状態は稍重。ダノンスコーピオンは、7頭立てとなったこのレースで単勝1.3倍の圧倒的1番人気に支持された。
ゲートが開くと、ダノンスコーピオンは、大外7番枠から速いスタートを切った。川田は手綱を抑え気味にし、内の馬たちを先に行かせた。ここで行き切ってしまう走りを覚えさせてしまうと、距離が延びるクラシックで折り合えなくなると考えたのだろう。
スローな流れのなか中団から後方に待機し、4コーナーから仕掛けて前をとらえにかかる。
ペースが遅かったこともあるが、この馬自身、スパッと切れるというより、徐々に加速して行くタイプなので、すぐには前との差は縮まらなかった。
それでも、直線に入ってラスト400mを切ったあたりの雰囲気では、このまま大外から前をまとめて呑み込みそうに見えた。
しかし、先に抜け出したルージュラテールもさらに脚を伸ばして抜かせない。
ラスト200mを切っても、まだルージュラテールが2馬身ほど前にいる。
アーモンドアイのような手前替えのスムーズさ
川田が右鞭を入れて叱咤すると、ダノンスコーピオンは、ラスト100m付近で手前を右手前に戻し、1完歩ごとに差を詰める。
ゴールまであと1完歩というところで並びかけ、最後の1完歩で首差とらえて、勝利をもぎ取った。
一度は絶望的に見えたところから差し切った勝負強さもすごいが、それ以上に、スパートするとフォームを変えて、重心を沈めて加速するところが素晴らしい。
同じロードカナロアを父に持つアーモンドアイは直線で何度も手前を替える特別な走りをした。この馬は直線で2度替えただけだったが、手前の替え方があまりにスムーズで、スイッチしたタイミングをリプレイで見極めるのにも苦労した。それだけ体がやわらかいのだろう。
ストライドが大きく、直線でノメるようなところがあったことから、良馬場ならさらに上のパフォーマンスが期待できそうだ。