能町　相撲を知らない出版社の人で、「こんなことで突っつかれていたら記者の仕事はできないよ」なんて言う人もいて、逆にびっくりしましたね。私としては、「政治家に粘着して大きな情報を取ろうとする番記者ならともかく、コロナ禍にも関わらずただお相撲さんにおごられる楽しいお付き合いをやめられなかっただけの人なんでしょ」と、突き放した見方をしてしまったんですが。

佐藤　私の場合はフリーランスで組織の看板は背負っていないので、新聞記者さんみたいに「他社に先駆けて情報を！」という仕事ではないし、立場上フランクには付き合っていけるかもしれない。ただ、気安いお相撲さんには、「番記者さんとうまく付き合ったほうがいいよ」とアドバイスしていたんです。記者さんと一線引いてるような、それこそ寄せ付けないような子もいるから。「記者さんというのは、ちゃんと勉強して大学を出て、相撲だけでなく、いろいろなスポーツを知っている。相撲界の内部事情に詳しかったりもするから、いろいろ勉強にもなるよ」なんて。

ライターの佐藤祥子氏。『Number』にて相撲コラムを担当　©Hideki Sugiyama

佐々木　今回の件で関わった記者がまずかったのは、食事をしたりキャバクラに行ったこと自体ではないんですよ。平時では問題ない。でも、まず時期がよくなかったことと、口裏合わせを主導していたこと。それが大きな問題です。これを間違わなければ、記者として取材相手との関係をより深く築くため、距離を縮めるための”記者としての努力”でもあると言えるんです。「べったりとくっついてナァナァの関係になってしまうのはいけない」との議論とは、また違う。僕も親方やお相撲さんと食事をする機会はありますし――最後に行ったのは昨年の2月の頭くらいですけれどね。コロナ禍で、さすがに彼らを誘えないですよ。何かあったら申し訳ないですから。あと、普段からも、「必ずゆかたか着物で来てくれ」と。どんなに部屋の近所や自宅近くの店でも、「私服で外出している」などと通報されたり写真を撮られたりしたら迷惑も掛かってしまう。そこは念押ししますね。

佐藤　逆にこちら側が気を遣いますよね。

佐々木　食事を共にしたりで距離を縮めることによって、やはり普段の取材の”あたり”も違ってくるんですよ。記者会見で、ただ質問するのとは違って雑談の延長線上でコメントを引き出すこともありますから。そういう時の話が面白かったり、お酒でも飲みながらリラックスして聞ける話が、とっておきのいいエピソードだったりすることもありますし。

「今度一杯行こうよ～」大相撲は独特な世界？

佐藤　佐々木さんは、大相撲を担当する前は、サッカーやオリンピックの担当でもあったそうですね。他の競技と大相撲とを比べると、やはり大相撲は独特な世界でもありますか？

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