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《6場所出場停止》大関・朝乃山の処分は重すぎ? 能町みね子と相撲担当記者が徹底検証
text by
佐藤祥子Shoko Sato
photograph byKYODO
posted2021/07/10 17:01
昨年3月に大関に昇進した朝乃山。今年の5月場所の最中に、相撲協会のガイドライン違反が発覚した
私がまず思い浮かんだのが、2007年の横綱朝青龍のサッカー問題でした。確かケガを理由に巡業を休んで母国のモンゴルに帰り、そのときサッカーを楽しんでいたことが発覚したんですよね。どうも周囲からこのイベントに誘われ、ついついサービス精神でボールを蹴ってしまった、と。この時は2場所の出場停止処分で、これですら当時の私は「重いのでは?」と思っていたんです。今では、横綱という地位を考えれば妥当かな、とも思えますが。
佐藤 阿炎の場合は、この件の前にSNSで不謹慎な動画を上げていたり、そのための協会による説明会で、「寝ていたから聞いてません」などと発言してしまい”イエローカード”が重なってもいたんですよね。
能町 阿炎も朝乃山も、聞き取り調査で嘘をついたことなどが処分に加味されてはいるんでしょうけれど、でも今がコロナ禍という前代未聞の事態というだけで、キャバクラに行くことなんて普通なら何も悪いことではない。3場所や6場所の出場停止って、休場中の横綱のサッカー問題や野球賭博問題を超えるほどの重罰なのか?と、その整合性がわからなくて。それと、6場所というのは丸1年になりますけど、野球選手だったら1年間出場停止といっても翌シーズンから出られるわけです。でも、大相撲の場合の罰則は、番付の降下も含んでいる。朝乃山が処分明けから順調に勝ち進んだとしても、幕内復帰ができるのが最短で2年後になるんです。だから実質、2年の謹慎と言ってもいい。現在27歳ということで現役力士としてとても大事な時期なのに、そこまで考えられての処分なのかな? と。不満というか、私は疑問なんです。
キャバクラよりも問題だった“虚偽報告”
佐藤 阿炎の3場所出場停止処分が、ある面、ひとつの基準になってしまっているんでしょうか?
佐々木 まず、朝乃山と阿炎の件は、このコロナ禍に於いて比較の対象になるとは思っていますが、たとえば朝青龍などの過去の不祥事の処分との比較は、まったくできないとも思うんですよ。今回、朝乃山の処分が6場所と発表された時に、「処分がインフレ化しているんじゃないか」という声も、結構、耳にしたんです。処分の数字的な部分だけ見てしまうと、そうとも受け止められ兼ねないと思います。でも、「コロナ禍のことである」というのが、まずは過去の処分とは比較しようがないんですね。