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ホークス「米ドラ1を蹴った男」スチュワートはどうしてる? 二軍防御率「0.97」で本人は「コンビニの食べ物もトライしてます」
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byKYODO
posted2021/06/30 17:03
4月に一軍に昇格。試合前練習に合流したソフトバンクのスチュワート。工藤監督から指導を受ける
「タイガース戦はいつもより良くなかったように見えました。高めに浮く球が多かったし、三振もあまりとれなかった(7回7奪三振)。ただ、その悪い状態の中でしっかりピッチングが出来たのは意味があると思います。
一軍からファームに落ちてきて5試合目の登板でしたが、ほとんど打たれていない。一軍で初めて投げたことで通用した部分、課題の部分がはっきり分かりました。彼自身にとって大きかったのでしょう。地に足をつけて練習が出来ているというか、プロとしての自覚がより強く出るようになりました。普段からの取り組む姿勢も違ってきました」
スチュワート本人にも話を聞くことができた。
「確かにタイガース戦はいい状態ではありませんでした。野手に助けられた。だけど、イニングを重ねるごとに自分の投球ができて、クオリティ・スタートを達成できたのは良かった。球速も上がっていますし(この日の最速は155キロ)、スタミナもついている。見てもらった通り、最後まで球速が落ちなかったし、8回だって行ける感覚はありました。身体が強くなったのと、投球フォームが良くなっているからだと思います」
一軍を経験したことについても訊ねた。
「イチグン(本人はそのように日本語で表現した)の打者と対戦してみて、イチグンで安定して投げるためにはニグンでは圧倒するくらいのピッチングをしないといけないことが分かった。今はその意識を持ってやっています。この前の試合も7回にホームランを打たれなければ、防御率はもっと良くなっていたんですよね? 次に投げる時は全部ゼロを並べますよ」
「コンビニの食べ物もトライするようになりました」
少しジョーク交じりに、笑顔を浮かべて自信をのぞかせた。
そのような言葉や表情も来日してしばらくは見られなかったが、昨年の途中あたりからチームメイトとも簡単な日本語でコミュニケーションをとるなど、日本での暮らしにも着実に馴染んできている。
「日本の文化にも興味を持つようになってきました。食べ物もね。最初の頃は買い物に行っても何と書いてあるか分からずに、そういったものは全部避けていました。だけど、最近はコンビニでも普通に買い物をして、トライするようになりました。相変わらずシーフードは苦手なので寿司は食べられないですけどね(苦笑)」
そして、スチュワートは「もちろん今年中にまたイチグンに上がること。自分としては、先発として呼ばれることが目標です」と力を込めた。
来日3年目でようやくベールを脱いだものの、一軍登板の4試合を見て肩透かしを食らったファンもいたかもしれない。だが、スチュワートは着実に成長を遂げている。
米球界の超逸材が日本でプロ生活をスタートさせるという前例のない挑戦。彼自身も「自分が成功すれば、米国のアマの有望な選手が将来、日本に来ることもあると思う。いいと思います」とパイオニアとしての自覚をもっており、さらなる飛躍を目指す。