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「私が強いの、ビッグダディに育ててもらったからだ」 スターダム・林下詩美が気づいた“赤いベルトの女王”の原点 

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原悦生

原悦生Essei Hara

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posted2021/07/01 11:01

「私が強いの、ビッグダディに育ててもらったからだ」 スターダム・林下詩美が気づいた“赤いベルトの女王”の原点<Number Web> photograph by Essei Hara

赤いベルトを持つスターダムの女王、林下詩美は、幼少期を振り返りながらプロレスラーとしての強さの秘密を語った

「違うな。私が強いの、気持ちじゃないな」

 給食はあったが、小麦粉を焼くのが定番だった。友達が食べているお菓子がうらやましかった。ハンバーグたべたいなあ、と思ったこともある。

「ごはんのおともは卵焼き。たまにお父さんが卵10個分とか8個分で作ってくれた。塩とかツユが入ったしょっぱい卵焼き。鶏も飼っていた時期もありましたけど、3羽だからとれても3個でうちには足りなかった。もし私が親だったら、ごめんね、いつも大変な思いさせて、と言っちゃいそうですが、それさえも感じさせない楽しい暮らしをさせてくれた。

 テレビも娯楽もなかったので、一緒に散歩に連れて行ってくれた。港の広いところで野球をしたり、砂浜で相撲を取ったり、子どもを一番に考えていてくれた。マンガみたいな貧乏な生活で、洗濯機がない時もありましたから、洗濯しなくちゃいけないという発想もなかった。体操着なんか洗濯物の山から引っ張り出して使っていた」

 貧しかった生活も今では懐かしい思い出。ケンカもした。

「懐かしかったなあ。お兄ちゃんが妹にヒザ蹴り。お兄ちゃんは宿題やらない子で、先生にいつも怒られて宿題で居残りさせられてイライラして。帰って来たとき、妹に『踊ろう』と言われて無視した。無視された妹が兄を軽く蹴ったら、兄が妹の腹に思いっきりヒザを入れた。それを清志に見られちゃって『それ、やり過ぎだろう』とめちゃくちゃ怒られて布団と棚の間で固まって泣いていた。

 あっ、違うな。私が強いの、気持ちじゃないな。素でケンカしてきたからだ。ビッグダディに育ててもらったからだ(笑)」

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