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「私が強いの、ビッグダディに育ててもらったからだ」 スターダム・林下詩美が気づいた“赤いベルトの女王”の原点
posted2021/07/01 11:01
text by
原悦生Essei Hara
photograph by
Essei Hara
林下詩美はワールド・オブ・スターダム王者だ。それを象徴する赤いベルトを保持して7カ月以上が過ぎた。6月12日には大田区総合体育館(以下、大田区)で朱里と対戦し、延長戦を含めて43分19秒、両者KOという壮絶な結末で5度目の王座防衛を果たした。
「朱里さんとやりながらどんどん楽しくなっていった。痛いけれど楽しい。ルール上は30分時間切れで防衛だろうけれど、あっちも納得しないだろうし、私はもっとやりたかった。そうしたら朱里さんが先にやりたいと言ってくれたのでよかった」
体のダメージはすごかった。顔は今までにないくらいに腫れた。
蹴られた頭、首、全身が痛かった、と語った林下は、「世界に通用するモノが違う女と戦った」ことを実感していた。そして「ベルトを賭けても、賭けなくてもまた戦いたい。そして決着をつけたい」と熱望した。
「赤いベルトを持ち始めてから、ベルトが私を成長させている。防衛を重ねていくにつれてスターダムを引っ張っていく気持ち、スターダムのトップ選手なのだという自覚が強くなっています」
「私は普通にしゃべっても棒読みみたいに聞こえる」
最高峰のベルトを巻くスターダムの女王は強い。だが、大田区の前までは「感情が見えなかった」とジュリアが言っていたことを伝えると林下は素直に答えた。
「間違ってない。私は昔から感情が出ない。私にないものを持っている人はうらやましい。私は普通にしゃべっても棒読みみたいに聞こえる。小さいころから大家族だった。感情は出さなくても家族には伝わった。クールで冷静と思われているけれど、冷静じゃないところもある。見せないようにしているし、見せられない。見せたいと思っても出せないタイプになってしまった。でも、時折、スイッチが切れると3女の林下詩美になってしまう。プロレスラー林下詩美の時間はクールでロイヤルな美しい林下詩美でいたいです」