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大谷翔平がいなければもう勝てない? “リアル二刀流起用”で見えてくる、エンゼルスの「苦しすぎるチーム事情」
posted2021/06/28 17:05
text by
笹田幸嗣Koji Sasada
photograph by
Getty Images
DHを解除し、リアル二刀流起用後に起こった延長戦での様々な珍事は、“背に腹はかえられない”エンゼルスの苦しいチーム事情から生まれた。
まずは珍事のおさらい。
二刀流無双の裏で起こっていた「2つの珍事」
<その1>
12回表、捕手のカート・スズキがファールチップを頭に受け脳震とうで退場。控え野手を使い切っていたエンゼルスは捕手経験のあるテイラー・ウォードを左翼から捕手に回し、左翼には先発投手のグリフィン・キャニングが入った。
<その2>
12回裏、2対2で迎えた2死一、二塁のサヨナラ機に投手のトニー・ワトソンの代打で起用されたのは先発投手のディラン・バンディー。結果は空振り三振に終わった。
力尽きたエンゼルスは13回、4時間51分の戦いの末に3対9で敗れ、借金2となった。
ことの発端はリアル二刀流で大谷を起用した監督の決断に始まる。もし、これがニューヨークやボストンの口うるさいメディアの前で起こった事象であれば、たとえ知将の名をほしいままにするジョー・マドン監督であっても袋叩きにあったのではないか。緩い空気が流れるエンゼルスだから大ごとには展開しなかった。そんな気がしてならない。
ア・リーグ本拠地の試合で攻撃の要である『DH』を解除し、投手をラインナップに入れるこの戦法は、今やすっかりエンゼルスの定番となった。もちろん、大谷がロースターに名を連ねるからこそ出来る戦略であり、他チームが真似できることではない。
監督も悩む「大谷が故障したらどうするのか?」問題
6月23日の本拠地でのジャイアンツとの交流戦。ジョー・マドン監督は今季8度目の投打同時出場で大谷を「2番・投手」で起用した。だが、過去7度とは少し事情が違った。
DH解除をする場合、指揮官はその条件を『控え野手3人』としていたが、この試合は左翼手のジャスティン・アップトンが腰の張りを訴えプレー出来る状態でなかった。26人のベンチ入り選手で途中出場できる野手は、内野手のフィル・ゴスリンと捕手のマックス・スタッシの2人だけ。これまでならば大谷は投手専任で出場するパターンだった。
しかし、ジョー・マドン監督はDHを解除し、リアル二刀流の出場を決断。試合前にはこう話した。