紳哉　最初のうちは公の場というよりも、小規模なイベントでやっていたんです。覚えているのは、最初に"カツラ芸"をやった時、絶対にウケると思ったんですけど、お客様がビックリしすぎちゃったんですよね。見ちゃいけないものを見ちゃったみたいな感じに（笑）。だけど、なんかそれもいいなと。

中村　それすら楽しんでいた、と（笑）。

紳哉　その中で浸透し始めたのは、ニコ生（ニコニコ生放送）などで配信されるようになったタイミングですかね。将棋ファンの方が数多く見てくれるとともに認知してくださり、徐々に浸透してきたという感じでしたね。

快活に話す佐藤紳哉七段©Tomosuke Imai

加藤一二三先生らとともに“面白い棋士”の先駆け

中村　紳哉先生の立ち位置は、本当に面白いなと思っていました。

紳哉　あれ、僕のこといじってる？

中村　いやいや（笑）、将棋に対するイメージを変えた立役者の1人だと心から思っているんです。今では加藤（一二三）先生などを筆頭に「棋士には個性あって面白い人が多い」という印象が世間に浸透した印象があります。ただ紳哉先生が色々とやり始めた頃は、そういった空気感はほぼなかった。だからこそ紳哉先生の言動が話題になったのは……本当に、先駆者と言っても過言ではないぐらいだと。

1982年頃の加藤一二三九段©Koji Kakuta

紳哉　ありがたい言葉！

中村　しかも、40代となった今でもやり続けてるというのがすごいです。最近は拍手すら起きるのだから、伝統芸レベルですよ。

紳哉　やっぱり、いじってるでしょ（笑）。とはいえお客さんも「いやあ見られた、見られた」っていう儀式みたいな感じになってるので。ここまで浸透すると、かなりやりやすいなとは感じていますよ。

実績でも新人賞や勝率1位を獲得している

――盤外で注目を集めがちな一方で、佐藤紳哉七段は将棋面でも新人賞や勝率1位を獲得された実績を有しています。

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