ボクシング拳坤一擲BACK NUMBER
井上尚弥の悲願“4団体統一戦”は年内か、来春か? ダスマリナス戦の超一流っぷりにドネア「もっと強くあらねばと思ったよ」
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph byNaoki Fukuda
posted2021/06/21 17:02
圧倒的に有利と見られていたダスマリナス戦でも強さを見せた井上尚弥は、いよいよ4団体統一戦に向かうことになるか
「80点くらいでどうでしょうか」
井上は試合後、テレビのインタビューに答えて次のように振り返った。
「(ジャブに左フックを合わせたとき)あの瞬間に読めたかなと。最初の一発を合わせた段階で相手の弱気な姿勢も見えましたし。ああ、こんなもんかという感じはありましたね」
仕留めに掛かる井上と、何とかサバイバルしようとするダスマリナス。ここを逃さないのもまたモンスターである。2回に右アッパーから強烈な左ボディを効かせ、追撃してダウンを奪うと、もうフィニッシュは目前だった。3回、再び左ボディでダスマリナスをキャンバスに沈めると、意地を見せて立ち上がった挑戦者に三たび左ボディを打ち込む。完全に悶絶した挑戦者を見た主審が迷わず両腕を交差した。
昨年10月ジェーソン・マロニー戦に続くラスベガスでの勝利だ。前回は7回KO勝ちという結果ながら、試合中に脚がつりそうになるなど決して満足のいく内容ではなかった。本人によれば、どうやら計量後のリカバリーに少し問題があったらしい。
この日は本人が「80点くらいでどうでしょうか」と自己採点したように、スタートから動きもよく、挑戦者に何もさせずに勝利した。マロニー戦の反省をいかし、連日40度を超える猛暑のラスベガスでもコンディションは万全。細部にいたるまで完璧を求め、自身の国内最多記録を更新する世界戦16連勝、14KOをマークした。
ドネアとカシメロが2団体統一戦を行うことが明らかに
大きな記録を打ち立てても、ファイトマネーが2試合連続で100万ドル(約1億1000万円)に届いても慢心することなく、細部にこだわって進化し続けるのは、バンタム級4団体を統一し、唯一無二の王者になるという野望があるからに他ならない。
完勝のチャンピオンは息を弾ませながらこうも話した。
「これくらいの試合をしないと、ドネアとカシメロが見に来ているのでアピールできないなと」
4団体統一を目指すなら残るターゲットはWBC王者のノニト・ドネア(フィリピン)と、WBO王者のジョンリール・カシメロ(フィリピン)だ。当初、カシメロは8月14日、WBAの正規王者に認定されるギジェルモ・リゴンドウ(キューバ)と対戦予定だったが、リゴンドウに代わってドネアとカシメロが2団体統一戦を行うことが明らかにされた。その勝者が井上と4団体統一戦に臨むというレールが敷かれたのである。