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【阪神】甲子園に帰ってきた鳥谷敬と能見篤史…「この世界は結果だぞ!」若虎たちに背中で伝えたメッセージとは
text by
豊島和男Kazuo Toyoshima
photograph byKYODO
posted2021/06/17 11:04
「代打・鳥谷」のコールで大きな拍手に包まれた甲子園。ロッテ鳥谷敬はタイムリーを放ち、一塁上で珍しく叫んだ
若手の頃は他球団の選手成績が掲載されている選手名鑑を頻繁に見ていた。
当時を知る関係者は「この選手は、どれぐらいヒットを打っているのかとか、よく名鑑を見ながら話していましたよ。この選手の上にいくためには、これぐらい打たないといけないとか言ってましたね」と舞台裏を明かした。数字に対するこだわりは人一倍だった。厳しいプロの世界で生き残るため常に結果を追い求めてきた。
その原点を阪神戦でも形として表した。
「代打・鳥谷」の名前を告げる場内アナウンスが流れると、甲子園では拍手が沸き起こった。2点ビハインドで迎えた7回1死一、二塁の場面。阪神・西勇輝のチェンジアップを捉えた一打はライト前へのタイムリーだった。自身が保持する交流戦の歴代最多安打を「332」に更新。
一塁に到達した瞬間には珍しく感情を表に出して、何かを叫んだ。そこにプロフェッショナルとしての意地が見えた。実に19年9月2日のDeNA戦以来、611日ぶりとなった甲子園での安打に球場全体が熱気に包まれた。
師弟関係のキャッチャー梅野と真剣勝負
また、6月2日の阪神対オリックス戦では能見篤史も甲子園のマウンドに帰ってきた。大声援を浴びて1点ビハインドの6回から登板。注目は無死一、二塁の場面だった。
シーズンオフの自主トレでは「チーム能見」の一員として師弟関係にある梅野隆太郎との対戦。カウント1ボール2ストライクから最後は内角低めの135キロ、スライダーで空振り三振に仕留めた。ピンチを背負いながら後続も打ち取って無失点で見事な凱旋登板を果たした。
「梅野の場面は能見が(キャッチャーを)リードしたみたいです。特に最後の1球。梅野は全部、自分のことを知っているから、阪神のときとはまったく違う配球で三振を取ったと言っていました」
後日、関係者が秘話を明かしてくれた。