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【阪神】甲子園に帰ってきた鳥谷敬と能見篤史…「この世界は結果だぞ!」若虎たちに背中で伝えたメッセージとは
text by
豊島和男Kazuo Toyoshima
photograph byKYODO
posted2021/06/17 11:04
「代打・鳥谷」のコールで大きな拍手に包まれた甲子園。ロッテ鳥谷敬はタイムリーを放ち、一塁上で珍しく叫んだ
鳥谷は2003年のドラフトで自由獲得枠として阪神へ入団した。
「(鳥谷が入団すれば)阪神のショートは10年間、大丈夫だと思った」と、早大の先輩でもある当時の岡田彰布監督は遠い未来も見据えていた。
この“予言”通り入団後は走攻守で活躍。ただ、あまり感情を表に出さないプレースタイルを揶揄されることがあったのも事実だ。
「気迫が感じられない」
「チームを引っ張ってく気持ちはあるのか」
「リーダーの素質はない」
期待の大きさからか、時には球団内部から物足りなさを指摘する声が聞こえてきたこともあった。チームの先頭に立って言葉と態度でグイグイと引っ張るタイプではなく、背中で引っ張るタイプ。その生まれ持った性格は簡単に変えられるものではなかった。いや、周囲の雑音が耳に入ろうとも変えることはしなかった。そして野球に取り組む真摯な姿勢も入団当初から決して変わることはなかった。
18年間、変わらないルーティーン
ロッテ3連戦の初戦となった5月25日だった。阪神は甲子園で午後6時に試合が開始される日は、基本的に午後2時30分から屋外で本格的な全体練習が始まる。一方で対戦チームの打撃練習が開始される時刻は午後4時。しかし鳥谷がグラウンドに現れたのは午後2時だった。当然、その場にロッテの選手は誰もいない。すでにユニホームに着替えた状態で元チームメートらと挨拶を交わす光景があった。
鳥谷にとっては何気ない行動だったかもしれない。しかし阪神の選手や関係者たちは同じ事を思っていた。
「変わらないな」
これまで偉大な成績を球史に残していた。地道な努力を積み重ねてきたことは誰もが知っている。阪神時代から本拠地でのナイター試合では試合開始の6時間以上前から出場へ向けた準備を開始。午前中から球場で汗を流すことも珍しくなかった。そのルーティーンはプロ18年目の今も変わっていない。