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【RIZIN】朝倉海の勝因と朝倉未来の敗因は同じ? なぜ弟は“フルスイング8連発”で勝ち、兄は三角絞めで失神したのか 

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橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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photograph byRIZIN FF Susumu Nagao

posted2021/06/16 17:04

【RIZIN】朝倉海の勝因と朝倉未来の敗因は同じ? なぜ弟は“フルスイング8連発”で勝ち、兄は三角絞めで失神したのか<Number Web> photograph by RIZIN FF Susumu Nagao

朝倉海と朝倉未来は東京ドームで行われたRIZIN.28に参戦し、それぞれ対照的な試合結果となった。兄弟の明暗が分かれた理由とは

 海は渡部の寝技をパウンドで潰した。だが未来はクレベルの寝技に呑み込まれた。2ラウンド、クレベルは組みついて至近距離からヒジ打ちを放つと(これで未来は目の周りを大きく腫らすことになった)自ら下になって引き込む。そこからすかさず三角絞め。未来は絞め落とされた。

「自分自身に落胆してます」

 試合直後の未来は、今後について「引退も含めて一度考えます」とコメントしている。翌日には現役続行を宣言したが、それだけショッキングな敗戦だったのだ。

「格闘技を始めてけっこうな月日が経って。10年くらいですかね。『アウトサイダー』から始まってこんな大舞台に来て。そこで負けた時に格闘技を今後もやっていく意味があるのかと。自分の幻想が打ち砕かれた。ここまでだったんだなと。自分自身に落胆してます。トップを目指せないのならやる意味がないのかなと」

 “不良格闘技大会”でキャリアをスタートし、地上波で生中継されるドーム大会のメインへ。信じられないような成功物語を彼は体現してきた。未来はクレバーだからその価値が客観的に理解できる。そして、日本で負けていては“その先”はないという判断も、頭がいいゆえにできてしまう。

下からの三角絞めは警戒されていたクレベルだが

 試合の中でも未来のクレバーさ、判断力は発揮されていた。1ラウンド、パンチでクレベルがグラつくシーンがあったのだがラッシュしなかった。「まだ(クレベルの)目が死んでなかったのでいきすぎると危ない」という判断だ。

 三角絞めも、ディフェンスを意識してはいた。

「コーナーポストに(クレベルを)押しつけていたので、あそこからは入らないなと思ってました」

 またクレベルの寝技について「組み力がないから安心してしまった」とも。未来の言葉を知ったクレベルは言った。「柔術は力じゃない、テクニック」

 下からの三角絞めは警戒されていた。未来はコーナーに押し付けて動けるスペースを消すという対策を実行してもいる。にもかかわらず、クレベルは極めてみせた。なぜそんなことが可能だったのだろうか。

【次ページ】 クレベルは未来の優れた判断力をも超えていた

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