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初優勝・千葉ジェッツは“プロにあるまじき姿”と批判を浴びた4年前からどう変わったか 「あのときとの最大の違いは…」
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byB.LEAGUE
posted2021/06/04 11:00
千葉ジェッツはBリーグ悲願の初優勝を遂げた。その背景にあるチームの成長とは
「1勝1敗のままじゃあ終われないよ!」
練習の締めくくりにある、ゲーム形式の練習でのことだ。練習時間には目安もあるから、それまではゲーム形式の練習を2回やって終わりにしていた。しかし、練習でのゲームが1勝1敗で終わったとき、従来のルールに異を唱えたのが新加入のサイズだった。
「1勝1敗のままじゃあ終われないよ! 決着をつけるために、もう1ゲームやらせてくれ」
彼は、今回のファイナルのGAME3の残り38.4秒で決定的な仕事をした。チームの課題であるオフェンスリバウンドに飛び込み、ショーターの放ったシュートがリングにはじかれたものをつついてゴールを決めた。試合の勝敗の行方が実質的に決まった瞬間だった。
2つ勝ってはじめて練習が終わるようになったことは、今シーズンから2勝先勝方式になったファイナルとの運命的なつながりを感じさせる。
CSのMVPに選ばれると、サイズはトロフィーを前にしてこう語った。
「世界には結局、勝者と敗者しかいません。そして、勝者しか、みんなには気づいてもらえません。勝ちたいという意欲について、僕は父から学びました。だから、練習であろうと、試合であろうと、全力を注ぐのです」
「ジェッツの試合をみると、元気をもらえるよね!」
Bリーグファイナルで過去に2度敗れたのち、3度目の挑戦でようやく、ジェッツは栄冠を手にした。
スポーツの世界では相手にコテンパンにやられることもある。でも、人は、何度たたきのめされても、どん底からでも這い上がることはできる。
それを体現することがスポーツの本質であるし、スポーツクラブがみんなに与えられるパワーなのである。
「ジェッツの試合をみると、元気をもらえるよね!」
そう思ってもらえるような存在になろう。そんな約束が今から4年前にかわされていた。
当時はGM補佐だった佐藤博紀(ジェッツ創設時の選手で、現在は事業本部長)が、大野をHCとして招いた際の約束である。あれは彼らにとっても大事なやり取りであるが、千葉県船橋市をホームタウンにする『千葉ジェッツふなばし』というクラブにかかわる、あらゆる人たちに幸せになってもらうという壮大な目標を立てて、かわされたものだった。
多くの人が制限や苦労を強いられるコロナ禍で行なわれたファイナルは、Bリーグとジェッツが存在する意義を証明するものとなったことを忘れてはならない。