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「オークスとダービー、どちらにしますか?」 桜花賞2着の牝馬ウオッカが“近代競馬史上初の偉業”を遂げるまで
text by
平松さとしSatoshi Hiramatsu
photograph bySatoshi Hiramatsu
posted2021/05/30 06:02
桜花賞2着から挑んだウオッカのダービーは今なお名レースとして語り継がれる。サトノレイナスはこの名牝の再来となるだろうか
「桜花賞を勝てば堂々とダービーに挑戦出来る」
06年10月、新馬戦を快勝したウオッカは3戦目で阪神ジュベナイルF(GI)も優勝。最優秀2歳牝馬に選定された。
「阪神ジュベナイルFの勝ち時計1分33秒1というのが非常に立派でした」
谷水氏はそう言うと、更に続けた。
「これならあと半マイルのびる2400メートルでもよい競馬が出来ると思いました。だから、ダービーを含めた3歳五大クラシック登録をしました」
3歳となり、エルフィンS、チューリップ賞(GIII)を連勝したウオッカは、桜花賞(GI)で単勝1.4倍の圧倒的1番人気に支持された。
「ただ、桜花賞の1週間前にフケ(発情)がきました。それでも良い状態で出せたと思うのですが、ひと足先に抜け出したダイワスカーレットを捉え切れないで終わってしまいました」
そう語る角居師に対し、谷水オーナーは次のように考えた。
「桜花賞を勝てば堂々とダービーに挑戦出来ると思っていました。でも、負けてしまったので、無難にオークスで雪辱を果たす事になると考えました」
「オークスとダービー、どちらにしますか?」
しかし、そう思っていた谷水氏は、角居師から思わぬひと言をかけられた。
「次走ですが、オークスとダービー、どちらにしますか?」
てっきりオークスの一択だと思っていたオーナーは、この言葉の行間を読んだ。
「『どちらに行きますか?』と聞いて来るという事は、角居先生はダービーに行きたいのだと考えました」
先述した通り、そもそも2400メートルでも好勝負が出来ると予期していた谷水氏は、角居師に下駄を預けた。角居師は言う。
「迷わずダービーへの挑戦を決めさせていただきました」