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堅守パナソニック優勝の裏に“10番”松田力也の有言実行「キックも全部決めます」大西将太郎が選ぶ“ベスト15”に福岡堅樹は? 

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大西将太郎

大西将太郎Shotaro Oonishi

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photograph byNaoki Morita/AFLO SPORT

posted2021/05/24 11:02

堅守パナソニック優勝の裏に“10番”松田力也の有言実行「キックも全部決めます」大西将太郎が選ぶ“ベスト15”に福岡堅樹は?<Number Web> photograph by Naoki Morita/AFLO SPORT

“最後のトップリーグ”を制したパナソニック ワイルドナイツ。現役ラストマッチだった福岡堅樹もトライで勝利に貢献した

 印象の残ったプレイヤーを挙げるなら、パナソニックの10番、松田力也ですね。

 試合前に「バレットには負けない」「キックも全部決めますよ」とメッセージが届いていたので、まさに有言実行ですね(笑)。長い距離のペナルティキックも決めるなど、力也の右足が獲得した2点、3点の積み重ねがスコアとなって表れました。バレットのキックの調子がやや悪かったことを踏まえると、こういうビッグゲームでは改めてキッカーの重要性を思い知らされます。

 力也はキック以外の面でも、チームを、自分自身をしっかりとコントロールできていたと思います。日本代表の司令塔として期待される選手が大事な試合でしっかりと活躍できたことは非常に喜ばしいこと。ケガの具合がとても心配ですが、今後の飛躍に期待したいですね。

 現役最後のゲームとして注目を集めたWTB福岡堅樹は……この日も速かったですね(笑)。彼の凄いところは毎試合、毎試合しっかりと自分の強みを出せること。今後も「福岡がいたら」と思うシーンはたくさんあるでしょう。多くの子どもたちに夢を与えたと思いますし、最後のスピーチも素晴らしかった。彼が残したものはこれからもラグビー界で語り継がれていくはず。ラグビー選手として新たなキャリアモデルを示せるよう、次のステージでも頑張ってほしいですね。

キャプテン中村亮土の充実ぶり

 終始リードされる苦しい展開となったサントリーも、試合終盤まで粘り強く戦い抜きました。途中出場の齋藤(直人/SH)がトライを奪ったり、最後には(ショーン・)マクマーンからWTB江見(翔太)に渡っていたら……と思わせるシーンもありました。終盤に見せた意地は、来季のチーム作りにつながっていくと思います。

 サントリーでは、シーズン通して存在感を発揮したキャプテンの中村亮土(CTB)を賞賛したいです。シーズン開幕前の予想でも“推しの選手”として紹介させてもらいましたが、彼もまたW杯の経験をしっかりとレガシーとしてチームに還元しているなと感じます。

 前半終了間際のトライも見事でしたが、彼の良さは目に見えないところにある。パスを投げるタイミングやサポート、判断……何より良い時も悪い時も一貫性のあるプレーを披露していたことが素晴らしい。バレットら多彩なバックス陣をまとめる今季の亮土は本当に頼もしかったですね。開幕前に目標を「BEST15に入ること」と明言していましたが、それに値するプレーだったのではないでしょうか。

リーグ発展が日本代表の強化に

  今季はコロナの影響で活動停止に追い込まれるチームも出るなど、難しいシーズンでしたが、決勝に進んだ2チームだけでなく、全チームが熱い戦いを見せてくれました。クボタスピーアズやNTTドコモレッドハリケーンズらの躍進は「ここまで変われるんだな」ということを証明してくれましたよね。

 チームというものは、必ずしも良い時ばかりが続くわけではありません。TLの歴史を振り返っても、パナソニックやサントリーだって勝てない時期があった。悪い時にチームに合った「勝つ文化」を作ってきたからこそ、今があるわけです。

 もちろん、親会社となる企業や、それぞれ培ってきた伝統や個性はあると思いますが、その変化の過程の中でどう楽しむか。そしてそれをどう強化につなげ、どう結果を残していくかが大事なんです。クボタだって苦労があって今シーズンを迎えられたわけですから、そういうチームがもっと増えれば、もっと増やせる環境になれば、日本ラグビーは発展していく。それがいずれ日本代表に繋がっていく。そんなことを実感した1年でした。

【次ページ】 大西将太郎が選ぶBEST15

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