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「誰が見ても、私の攻撃がきれいに決まっているのに」 空手・月井隼南が“ジャッジの不利”のなか快挙を達成できた理由
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph by本人提供
posted2021/05/20 11:00
空手の月井隼南は、東京五輪へ向けて最後の勝負をむかえようとしている
メンタル面で月井が頼った「ロク先生」
新さんが空手の指導者ということも手伝い、月井は幼少期から空手の修行に励んだ。練習量も稽古中の態度も優等生。子供の頃から、できて当たり前と見なされていた。そのせいだろう。練習は自問自答しながら積み重ねていくタイプだった。いまでも技術練習だけなら、ある程度自分でできると考えている。月井が敬意をこめ「ロク先生」と呼ぶロクサンダに頼ったのはメンタルの部分だった。
「ロク先生は嘘のない言葉で、私のいいところをしっかりと指摘してくれる。自分と先生の意見が一緒だったら、すごくうれしい。答え合わせをしている感じですね」
プレミアリーグ後、月井は昨年練習の拠点としていた日本、あるいはアパートを借りっぱなしのフィリピンに戻ることはなかった。理由はコロナ以外にはなかった。日本だと帰国後否応なしに2週間の隔離生活を強いられる。「(オリンピック直前に)2週間も練習を休んだら身体がダメになってしまう」。
一方、フィリピンだと新型コロナウイルスの感染拡大でロックダウンを繰り返している状況なので、一度入国するとしばらく出国できない可能性が高い。そういうことを踏まえ、月井は引き続きセルビアの小都市アランジェロヴァツに練習の拠点を置く決心をした。
「もう何度も来ているので、町のどこに何があるかまで把握している。ロク先生も私の性格を理解しているし、感染者も少ないので、このままセルビアにいる方がリスクは少ないと思いました。ポルトガルから戻ってきたときも、検査結果が陰性だったから隔離はない」
五輪への最終予選は1日に8~9試合
今回の優勝で月井の世界ランキングは10位から8位に、それとは別に選定されているオリンピック・スタンディングは15位から13位まで上がった。東京オリンピックに出場するためには、6月11日(現地時間)、フランス・パリで開催されるオリンピック最終予選で3位以内に入ることが条件となる。
「世界選手権やプレミアリーグだと5~6試合なんだけど、最終予選は1日に8~9試合闘わなければならない。なので、体力と集中力は必要不可欠。あとはケガをしないこと。準決勝は総当たりになります」