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「誰が見ても、私の攻撃がきれいに決まっているのに」 空手・月井隼南が“ジャッジの不利”のなか快挙を達成できた理由
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph by本人提供
posted2021/05/20 11:00
空手の月井隼南は、東京五輪へ向けて最後の勝負をむかえようとしている
知名度の大小が勝敗を左右するジャッジも
「フィリピン代表になって4年、もう25大会以上出て5回ほど銅メダルは獲っています。でも、なかなかその先にはいけなかったですからね」
中には首を傾げざるをえないジャッジもあった。月井は「誰が見ても、私の攻撃がきれいに決まっているのに、旗が揚がらないことがあった」と振り返る。
「それは私に知名度がない。あるいはフィリピン国旗に力がなかったことが理由だったと思います。やっぱり拮抗した勝負になったら、(日本やイランなどの)強豪国に揚がりやすい」
筆者も、武道系の格闘技で知名度の大小が勝敗を左右するジャッジを何度か目撃した。武道系ではなくなりそうでなくならない悪しき慣習とはいえ、そういうジャッジが続くと立場が弱い者はたまったものではない。
「今回の隼南はずっとゾーンに入っている」
では、なぜ今回メジャーな国際大会で優勝という快挙を成し遂げることができたのか。その理由として月井はここ2カ月間に及ぶセルビアでの強化合宿を挙げた。
「以前の私だったら『絶対に敵わないだろう』と感じていた各国の強い人たちとずっと練習したおかげだと思います。気がついたら、私もポイントをとれるようになっていた。私が先取り(先にポイントをとること)したり、全勝したり」
今回の強化合宿には2018年の世界選手権で植草歩に勝ったエレナ・ハジリアドゥ(ギリシャ)、61kg級の世界王者ヨハナ・プレコビッチ(セルビア)、東京で開催されたプレミアリーグで3位に入賞したティッタ・レイシモ(フィンランド)らそうそうたる面々が集まっていた。
今回のプレミアリーグ前、月井は「今回はいけるかも」と自信を深めていた。同調するように、コーチのロクサンダ・アタナソフは「今回の隼南はずっとゾーンに入っている」とその成長ぶりに目を細めた。
「いまの隼南は集中力や判断力がものすごく高い。だから(体重差のある)練習相手とやっても一番調子よく見える」