フランス・フットボール通信BACK NUMBER
「成功の保証は何もないが…」バイエルンのフリック監督が電撃退団表明2カ月前に語っていたこととは
posted2021/05/19 06:00
text by
アレクシス・メヌーゲAlexis Menuge
photograph by
Sébastien Boué/L’Équipe
2019年11月、シーズン途中にバイエルンの暫定監督に就任したハンス・ディーター・フリックは、苦境に喘ぐクラブを瞬く間に戦うマシンへと変貌させた。彼のもと態勢を立て直したバイエルンは、CLとブンデスリーガ、ドイツカップの3冠を達成した。正式な監督となった今季は、CLこそ昨年の決勝の相手であったパリ・サンジェルマンに準々決勝(2試合合計3対3、アウェー2倍ゴールにより敗退)で敗れたものの、ブンデスリーガ9連覇の金字塔を打ち立てて長期政権を築くかと見られていただけに、4月21日の退団表明はクラブ内外に大きな衝撃を与えた。
『フランス・フットボール』誌がフリックのロングインタビューを掲載したのは、今年2月16日発売号においてである。CLノックアウトステージが始まるタイミングでの掲載で、このときすでにフリックは辞任を考えていたのか、アレクシス・メヌージュ記者の質問に対して、口から出てくるのはほとんどが前向きな言葉ばかりであるなかに、チームの未来像については言葉を濁しているように思える。
前後半に分けてお伝えするインタビューの前編では、フリックがどうやってバイエルンを立て直したかを語っている。(全2回の1回目/#2に続く・肩書や年齢などは『フランス・フットボール』誌掲載当時のままです)
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(田村修一)
――あなたがニコ・コバチの後を継いでバイエルンの監督に就任したのは2019年11月3日でした。クラブが勢いを取り戻し、常勝街道を再び進むために何をしたのでしょうか?
「最初に私が大事だと感じたのは、私がチームを信頼し、選手が自分たちのポテンシャルに自信を持っているとチーム全体が確信することだった。結局のところ大きな変更は加えてはいない。私はスタッフたちと幾つかの調整をしただけだ」
常勝復活へのポテンシャルはすでにあった
――具体的にはどこを調整したのでしょうか?
「リスクを冒すことを厭わず、積極的に前にボールを運びながら、より高いインテンシティでプレーをする。その結果、私たちは再びゲームを支配し、自分たちのプレーを徐々に実現できるようになった。すべてはCLグループリーグのオリンピアコス戦(2019年11月6日、2対0でバイエルンの勝利)から始まったが、シーズンのターニングポイントとなったのはドルトムントとのリーグ戦(同11月9日、4対0でバイエルンの勝利)だった。あの試合では、やろうとしたことがすべてうまくいった。たしかに秋のはじめはいろいろ難しかったが、望みを達成できるだけのポテンシャルをチームは持っていた。