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「成功の保証は何もないが…」バイエルンのフリック監督が電撃退団表明2カ月前に語っていたこととは
text by
アレクシス・メヌーゲAlexis Menuge
photograph bySébastien Boué/L’Équipe
posted2021/05/19 06:00
2020年8月、就任からわずか9カ月あまりで、フリック監督はバイエルンを9度目の欧州王者に導いた
「日々の練習で、高いインテンシティとクオリティ、最大限の集中力を選手が発揮しているのを私は見たい。それがチームのベースであるからだ。他には選手たちが常に喜びに溢れていること、チームが一丸となって働くことだ。そうした基準を満たすことで、チームは素晴らしいものになっていく」
――すべてのタイトルを獲得しずっと脚光を浴びながら、どうすれば謙虚さを保ち続けられるのでしょうか。結果を得るために謙虚さは不可欠でしょうか?
「私はバイエルンのようなビッグクラブで指揮を執るのは初めてだが、サッカーの世界では数十年生きている。そこでさまざまな役割をこなしながら経験を積んだ。クラブの他の人々に光をあてるのはとても大切なことだ。彼らは注目に値する。私個人に関しては、スポットライトは必要ない。家庭環境も社会環境も安定しているし、人生において様々なことを経験した独立した人格だ。それらの経験があるから落ち着いた日常生活を送れるし、指導者としてもやっていける」
監督に昇格後、実践したこと
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――コーチから監督に昇格して、これだけ個性の強い選手を揃えたチームを指揮できた理由はなんでしょうか?
「自分たちが正しいと確信し続ける。選手たちに確固としたパーソナリティとシンプルさを求め、キャプテンであろうと控え選手だろうと目的達成のために重要であることを理解させ、選手とのコミュニケーションをしっかりとる。私が実践したのはそういうことだ」
――ビッグクラブの監督として、ユルゲン・クロップがリバプールでそうしたように、長期的なビジョンを示すことは可能ですか?
「できないことはないが、不測の事態はいつでも起こり得る。だからあらゆる可能性に対して常に開かれているべきだし、成功への可能性を最大限にするためにも試合に向けてできる限りの準備をおこなう。成功の保証は何もないが、成功に向けての準備ならできる。しっかりと準備をすれば、それがメンタル面の準備であれ相手の分析であれ、いい精神状態で試合に臨める。そして試合後に自分たちを振り返って『勝つためにすべてをやり尽くした』と言うことができる。勝てるという気持ちをどんな時にも持ち続けるべきだし、すべては自分を出し切るためにやっていると思えることが重要だ」
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