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日本と正反対のイタリア “ワクチン事情” 着々と進む代表選手の接種に「優遇するな」の声が聞こえない理由
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2021/05/18 11:00
ワクチン注射を受けたことを会見で報告したインモービレ
「五輪はすべてのアスリートにとっての夢の結実です。私自身その舞台に参加し、幾度か勝利できたことを誇りに思いますし、選手たちの心情に寄り添いたいと願っています。だから、選手たちにはできうる限り、肉体も精神も最高のコンディションで臨んでほしい。ワクチンを始めとする支援を惜しまないことを私は約束します」
ベッザーリは政務次官として、国としての姿勢をはっきりと示した。
最強の勝負師だった彼女は決して陰鬱な顔は見せない。晴れやかな笑顔で“イタリアのアスリートたちよ、東京へ行け。憂いなく戦え”と背中を押している。
6月中旬にはワクチン接種を終える
5月に入り、陸上、空手、トランポリン、カヌー……直前の予選ラッシュが続く。CONI(伊オリンピック委員会)は、総勢314人(女性144人)を派遣した前回リオ大会同様、最終的には300人超の選手団を見込んでいる。
ベッザーリ政務次官の発表から1カ月足らずで、イタリア五輪選手団のワクチン接種体制は整った。
今月7日から、伊スポーツドクター連盟の協力の下、ローマとミラノの2拠点でワクチン投与が始まっており、6月中旬には全選手がワクチン接種を終える予定だ。
伊紙『ガゼッタ・デッロ・スポルト』は、開会式まで100日を切った4月14日、東京五輪の準備不足と混乱を伝えた。
開催の成否には踏み込まないものの、悪化するコロナ感染状況と五輪開催に否定的な日本の国内世論に触れた上で「ウイルス問題を解決するには1年延期でも不十分だった。(4月14日時点で)ワクチン接種が済んだ人口は1%に満たない。日本でのオリンピックはどう転んでも“特殊なもの”になるだろう」と、楽観視できない現状を指摘している。
ただし、伊スポーツ界のドンであるCONIのジョバンニ・マラゴー会長は、先月末に五輪開催中止の可能性を問われた際、「開催に一片の疑いなし」と豪語した。IOCとの同調路線は崩さず、しかし会長は状況次第であっさり反対派への鞍替えも辞さないだろう。地中海の国のリーダーたる者、寝業師でなくては務まらない。