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「オスプレイvs鷹木」は何度でも見たくなる 格差への不満も数奇な運命もないのに“令和の名勝負数え唄”になったワケ
posted2021/05/11 11:01
text by
原壮史Masashi Hara
photograph by
Masashi Hara
オチを知っていても面白い、もしくは、全て知っていても何度でもそのコンテンツに手を伸ばす、という経験は誰にでもあるに違いない。
好きな音楽を毎日どころか同じ日に何度もリピートしたり、好きな映画のDVDを買ったり、ドラマの再放送を見たり、読んだことのある本をまた読んだり、深夜ラジオのフリートークを何度も聞いたり……そういうものは誰にでもあるだろう。
プロレスにも、何度でも見たくなる試合、というのはある。ただしそれは、2つの使われ方をする。
1つ目は、先の例のような既に終わった試合を指すパターン。2つ目は、同じ選手同士でまた試合をしてほしい、という意味で使われるパターン。
5.4福岡で行われたウィル・オスプレイvs鷹木信悟は、前者だけでなく後者にも当てはまるものだった。
オスプレイvs鷹木は今年のベストバウト筆頭候補
この日、試合前に菅林直樹会長がリングに上がり、カードの変更が発表された。セミファイナルに予定されていたエル・デスペラード vs YOHのIWGPジュニアヘビー級選手権試合は中止となってしまい、希望者にはチケットの払い戻し対応をすることになった。
しかし、観客が我先にと外に出ていくことはなかった。それだけメインイベントへの期待は大きかった。
その期待は裏切られなかった。それどころか、期待を遥かに超えてきた。
試合時間は44分53秒。それだけ見せつけられれば普通はお腹いっぱいになる。しかも、ただ長いだけではない。その中身は試合開始直後から濃厚であり、中弛みとは無縁。終盤の攻防は当然のように激しさを増した。間違いなく今年のベストバウト筆頭候補だ。
そんな試合を約45分も見れば、散々食べた挙句にラストオーダーでつい頼みすぎてしまったバイキングの後のような状態になって然るべきだが、なぜかそうはならなかった。帰ったらまた見よう、そして、早く2人の5度目のシングルマッチを見たい、そういう気持ちで福岡国際センターを後にすることになった。オスプレイvs鷹木でお腹いっぱいになったけれど、オスプレイvs鷹木は別腹。そんな不思議な状態で。