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「女優vs交通情報のお姉さん」に18歳同士“意地の張り合い”対決も… 若手勢ぞろいの興行“ピースパ”に見る女子プロレスの未来
posted2021/05/10 11:00
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Norihiro Hashimoto
競技人口の増加という点から見ると、女子プロレスはとてつもない急成長ジャンルだ。
80年代のクラッシュギャルズによる大ブーム、90年代の団体対抗戦時代は遠い過去の話。“インディー”として女子プロレスはしぶとく生き残り、今また勢いづいている。
日本で活動する女子レスラーは、週刊プロレスの2021年版選手名鑑によると200人あまり。そのうち40名以上が2019年以降のデビュー(キャリア3年以内)だ。キャリア5年目、2017年以降デビューまで含めると90人を超える。半数近くの選手が“新人・新鋭”にあたるわけだ。
もともと女子プロレスは男子と比べてキャリア25年、30年という大ベテランが少ないのだが、それにしてもここ数年はデビューラッシュと言える状態で新人の割合が高くなった。当然、選手数は激増している。
12歳の練習生ぶどうが見せたふてぶてしさ
藤本つかさが取締役選手代表を務めるアイスリボンは、育成を主眼に他団体からも多数の選手が参戦する若手主体の興行『P's Party』略称ピースパを2018年にスタートさせた。普段の試合は埼玉県の道場兼常設会場で行なわれるが、5月4日には横浜ラジアントホール大会を開催。小さな会場ではあるがピースパにとってはビッグマッチ。それでもチケットは完売になった。
開会式の後に組まれたのは3分間のエキシビションマッチ。オーストリア出身のテクラに練習生ぶどうが挑んだ。ぶどうは12歳。初めてのエキシビションでは開始前から緊張で泣いていたが、今回は相手の顔に張り手を見舞うふてぶてしさを見せた。
練習生の段階からテストを兼ねたエキシビションで場数を踏ませ、ファンに顔と名前を覚えてもらうのがアイスリボンのスタンスだ。いつかぶどうがデビューし、チャンピオンになった時、ピースパの会場にいたファンは我が事のように誇らしい気持ちになるに違いない。
本戦第1試合は向後桃vs石川奈青のシングルマッチだった。向後は2019年デビューで芸能界からのプロレス挑戦。アイスリボンの石川はこの日がデビュー1周年の記念日だった。彼女は普段、ラジオの交通情報案内を仕事にしている。
この2人のような“兼業レスラー”が増えているのも近年の特徴だ。単に「人気が出るまでは食えないからバイト」ということでもなく、ポジティブな意味での“二足の草鞋”の選手も多い。