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【世界戦直前取材】「20代前半で天国と地獄を経験した」“異色の元世界王者”高山勝成が明かす、37歳でもボクシングを続ける理由
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byEd Mulholland/Matchroom
posted2021/05/08 11:01
日本時間の5月9日、“37歳のチャレンジャー”高山勝成が危険なタイトル戦に臨む
チャンピオンのソトは24歳ととても若く、危険で、勢いのある選手です。メキシコ人選手ですし、マッチルーム・ボクシングが彼を売り出したい狙いもひしひしと伝わってきます。そんな彼が持っているもので僕が持っていないものもありますけど、逆に僕が持っていて彼が持っていないものもある。これまでに得た経験とかそういったものをすべて駆使し、リング上ではベテランらしく戦いたいです。
ライトフライ級という軽量級でありながら、アメリカの舞台で戦えるのは光栄なこと。ソトへの挑戦希望者がたくさんいた中で、自分が抜擢されたのは、高く評価された2014年のメキシコでの試合(対フランシスコ・ロドリゲス・ジュニア戦)だったり、他の海外の実績であったりを、海外の記者さんや皆さんが知ってくれているからだと感じています。軽量級ならではのスピーディでエキサイティングな試合を、アメリカ、全世界のファンにお届けできたらと思っています。是非楽しみに待っていてくださいということはお伝えしたいです。
20代で“天国と地獄”を経験して……
37歳になっても自分がボクシングを続けている理由は幾つかあります。14歳でボクシングを習い始めて、ボクシングが大好きになりました。この年齢になってもボクシングが大好きという気持ちは変わらず、それがまず第一なんです。
目標を達成したら、人は満足するものじゃないですか。失敗したら、自分はもうここでいいんじゃないかとそこでグローブを吊るす選手もいるのでしょう。ただ、自分の場合はそうではない。ルーキーの頃と変わらず、向上心、挑戦心を保っているんです。
まだ戦える身体と精神力があるので、そのたびに新たな目標と目的を見つけ、それに向けて突き進んでいます。現状に満足したら、よくないおじいちゃんになってしまいますよね。自分は何かに挑戦し続けられるようなボクサー、人間でありたいという気持ちを常日頃から持つようにしています。
こういった自分の考え方を形作る上で、プロキャリアの中で特に前半の頃、20代前半で天国と地獄の両方を経験したというのが基礎となっていると思います。2005年4月にイサック・ブストス(メキシコ)に勝って初めてWBCのタイトルを獲得しましたが、防衛戦ではイーグル京和(角海老宝石)に負けてしまいました。その1年3カ月後にカルロス・メロ(パナマ)に勝ってWBAの暫定タイトルを取りましたが、今度は正規王者だった新井田豊さんとの統一戦で負けました。