熱狂とカオス!魅惑の南米直送便BACK NUMBER
藤井清竹くん7歳が「サッカーするためにブラジルに残りたい」と言ったら? 両親の答えは…【日本人初の名門フラメンゴ加入】
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byHiroaki Sawada
posted2021/05/05 17:04
フラメンゴの一員となった藤井清竹君。彼の挑戦を引き続き追っていきたい
紅白戦が始まると父兄が“もう1人のコーチ”に
最初はパス回し、ドリブルなどの基本練習。この間、父兄は大きな声で談笑している。練習の邪魔になるのでは、と思うくらいだが、誰も気にしていない。このあたりが、いかにもブラジルらしい。
ところが――練習の後半になって紅白戦が始まると、父兄が俄然色めき立った。スタンドの席を立ち、コートの外の金網にへばりついて、息子のプレーを食い入るように見詰める。良いプレーをすれば「いいぞ!」と叫び、ミスをすると体をよじって残念がる。
コーチが「水分を取れ」と叫んで練習が中断されると、息子を手招きして「もっと落ち着いてパスを出せ」とか「思い切ってシュートを打つんだ」などと指示する父兄もいる。それを聞いて、真剣な表情でうなずく息子たち。父兄は、"もう1人のコーチ"なのだった。
ADVERTISEMENT
しばらく見ていると、チームの概要がわかってきた。
この日の練習に参加したのは23人で、紅白戦でプレーできるのは10人だから、13人は補欠。監督、コーチが適宜、選手を交代させるのだが、各ポジションの序列に応じてプレー時間を決めている印象を受けた。
センターバック清竹君のプレーぶりは?
清竹君がプレーするフィクソ(CB)のポジションには、状況判断が的確で相手のパスを頻繁にカットでき、確実にボールをキープして精度の高いパスを出せる選手がおり、当面、彼がレギュラーのようだった。
清竹君は、最初は相手チームの突破を許したりしていた。しかし途中から落ち着き、相手のパスをインターセプトしたり、縦方向へのパスを通したりしていた。当面の序列は、控えの1番手のようだった。
言わずもがな選手は皆、できるだけ長くプレーしたい。まだ合格が決まっていない者はなおさらで、他の選手がプレーしているのに気がはやってコートに入り、外へ出された子もいた。
エンゾもフィクソだが、コートの外で出番を待っている時間が長かった。最初に出たとき、ゴール前で相手のパスをカットしたところまでは良かったのだが、パスが失敗し、それが失点につながってしまった。次に入ったときは、中盤でこぼれ球を拾い、巧みにボールをキープしてから、縦方向へのパスを成功させた。最初の失敗を何が何でも挽回しようという気持ちが、手に取るようにわかった。その後も、懸命にプレーしていた。