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【天皇賞・春】“ビワハヤヒデvsナリタタイシン”以来の阪神開催で何かが起きる? 当時、岡部幸雄が美浦に戻って語ったこととは
text by
平松さとしSatoshi Hiramatsu
photograph byKyodo News
posted2021/05/01 11:02
今年の天皇賞・春はビワハヤヒデ(左)が制した27年前以来となる阪神開催だ
ビワハヤヒデをナリタタイシンが追い上げて…
レースは人気薄のルーブルアクトがハナに行く形。スタート直後は後方にいたビワハヤヒデだが、すぐに掛かり気味になって2番手まで進出。岡部騎手が抑えて何とか先頭まで持っていかれる形は回避した。
一方ナリタタイシンは11頭立ての後方2番手で折り合う。序盤は先頭から相当離れた位置で進む事になった。
1周を終え、2周目の向こう正面に入った時点でも、有力馬の位置取りに大きな変化はなかった。逃げるのはルーブルアクトでビワハヤヒデは2番手。ナリタタイシンは相変わらず離れた後方2番手だった。
ラスト1000メートルを切っても馬順こそ大きく変わりはしなかったものの、先頭から最後方まではぎゅっと詰まってきた。こうして各馬3コーナーに差し掛かると、ナリタタイシンが大外を回りながら徐々に先団を捉えられる位置まで上がって来た。そして、直線に向くと先頭に立ったのはビワハヤヒデ。これに外から伸びて来たナリタタイシンが4番手、3番手、そして2番手と馬順を上げて迫る。しかし、その差は最後まで“脅かす”というところまでは行かず、結果、ビワハヤヒデが3分22秒6の時計で2着のナリタタイシンに1と4分の1馬身の差をつけて優勝。3着には重賞3連勝中で3番人気だったムッシュシェクルが入ったが、ナリタタイシンから遅れること2馬身半の差。上位勢は力通りと思える結果になった。
「行きたがるくらいの馬じゃないとダメだと思うよ」
“長距離は騎手の腕”とよく言うが、正にそう実感させられる結果だった。普段とは違う舞台だからこそ尚、鞍上の巧みさがモノを言ったのかもしれない。ちなみに当時、美浦に戻って来た岡部騎手に「序盤は少し掛かりましたね?」と聞いた際の、名手の答えが強く印象に残った。
「行きたがるくらいの馬じゃないとダメだと思うよ。むしろ走りたがらない馬の方が困るからね」
行間で「行きたがる馬をいかになだめられるかにジョッキーの腕の差が出るのでは?」と問いかけられた気がした。