濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
減量していたのに「カップ麺食べながら泣いて、YouTubeで…」 ぱんちゃん璃奈が明かす、突如試合が遠のいた格闘家の思い
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byDef Fellow
posted2021/04/29 17:04
計量前日に突如試合の延期が決まったぱんちゃん璃奈。厳しい練習や減量を越えた先の緊急事態宣言だった
“計量前日の興奮”で1時間しか眠れなかった
カップ麺の他にスイーツを10種類くらい買った。ポテトチップス、じゃがりこ、パイの実、コンビニ弁当のオムライスも。
「でも達成感がないから全然おいしくなかったですね。夜中の2時まで食べてましたけど、胃が小さくなってるからそんなに食べられなかったし」
結局、金曜の夜は1時間しか眠れなかった。試合が1カ月後になったと頭では分かっているし胃にはジャンクフードが詰まっているのだが、それでも“計量前日の興奮”が体から抜けきっていなかったのだ。緊急事態宣言は、もちろん彼女のような存在を想定していない。
主催者サイドにとって、大会延期は苦渋の決断だった。23日の首相会見から25日の大会までは2日あるのだが、大会前日の昼に計量だから時間の猶予は実際には半日しかない。23日のうちにどうするか決めなくてはいけなかった。会場側が「中止(延期)もしくは無観客での開催」という方針を打ち出し、KNOCK OUTは前者を選んだ。ジム、関係者への連絡は夜半までかかった。そうした事情を抱える人間がいることも、当然ながら緊急事態宣言は想定していないだろう。
「イベントに救いのない状況が続いています」
「チケット収入ゼロを承知で無観客大会を行なうか、5月に押さえていた日程にスライドするか。最終的に全スタッフで協議した上で山口元気代表に判断してもらいましたが、どちらが正解でどちらが間違っているという話ではないと思います。どちらにしても苦しいですし、それを言うならこの1年はずっと苦しい。イベントに救いのない状況が続いています」
そう語ったのはKNOCK OUTのプロデューサーを務める宮田充。かつて全日本キックボクシング連盟の興行部長として辣腕を振るい、Krushと新生K-1を世に出す。昨年、K-1から離れるとしばしの休養期間を経てKNOCK OUTの運営に加わった。
現在、どの会場も収容人数が規制されている。後楽園ホールの場合は1席ずつあけてフルキャパシティの半分弱、750人ほどの収容だ。リングから客席の“ディスタンス”を確保するためにリングサイドの席を減らす必要もある。
「どの団体もチケット代を上げざるを得ない。といって“客席数が半分だからチケット代は倍で”とはいきません。選手のファイトマネーを半額にするわけにもいかない。KNOCK OUTは有料のネット生中継を実施していますが、それでもチケット収入の減額分を賄うまでにはいたらないですね」