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減量していたのに「カップ麺食べながら泣いて、YouTubeで…」 ぱんちゃん璃奈が明かす、突如試合が遠のいた格闘家の思い 

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橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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posted2021/04/29 17:04

減量していたのに「カップ麺食べながら泣いて、YouTubeで…」 ぱんちゃん璃奈が明かす、突如試合が遠のいた格闘家の思い<Number Web> photograph by Def Fellow

計量前日に突如試合の延期が決まったぱんちゃん璃奈。厳しい練習や減量を越えた先の緊急事態宣言だった

「練習が仕事、試合は給料日」

 格闘技の世界には「練習が仕事、試合は給料日」という言葉がある。試合でだけ頑張ればいいというものではない、日々の練習こそが仕事なのだという戒めだが、今回の場合は「給料日」がいきなり1カ月後に延びたことになる。ぱんちゃんはまだキャリアが浅いもののアルバイトなどをせずファイター専業で生計を立てているから、余計に影響が大きい。主な収入源はファイトマネーとスポンサー料だ。

「そのスポンサー料も試合をすることで発生するので。ケガで欠場した期間もあるので、今年はまだ“給料日”が来てないんですよ(笑)。それでもグッズの売り上げや(メディア出演などの)お仕事があるのはありがたいです」

 4月の試合が5月になったことで、それ以後の試合も後ろにずれ込むことになる。年間の試合数が予定よりも減るかもしれない。つまりは年収減。それは団体も同じで、KNOCK OUTとしては6月以降の後楽園大会を追加したいそうだ。

「ただ、今回の緊急事態宣言で興行をできなかった他団体さんも当然、土日祝日のスケジュールを押さえたいでしょう。まずは選手たちに試合の場を作るために近々で1大会増やしたいですが、曜日しだいというところですね」(宮田)

「愚痴って泣いて、カップ麺食べながら泣いて」

 大会がなくなった分の補償があればいいというわけでもない。格闘技は、ただ「食うため」にやるものではないのだ。ぱんちゃんは言う。

「やっぱり一番つらいのは、リングに上がれないっていうことですね。前は普通にできてたのになんで……って。なんのために練習するかって言ったら、試合でみなさんに見てもらうため。強くなった自分を確認できるのもリングの上なんです。他に仕事もしてないし、キックボクシングに人生全部かけてるので、感情の持って行き場がリングしかない。

 私は人間の中でもトップクラスに感情の起伏が激しくて(笑)。試合が延期になって、もちろん泣きました。実家に連絡して泣いて、ジムの人たちに愚痴って泣いて、カップ麺食べながら泣いて、その映像をYouTubeに流して。そこでファンのみなさんに励ましてもらったからなんとか……。ツイッター、インスタグラム、YouTube、LINEあわせて1000件以上のメッセージがありました。本当に恵まれてます。助けられてますね」

自身の公式YouTubeチャンネルで涙を流しながら「ファイターはみんなそうだから」と語った ぱんチャンネルより涙を流しながら「ファイターはみんなそうだから」と語った ぱんちゃん璃奈公式YouTubeチャンネルぱんチャンネルより

 単なるビジネスではないというのは、宮田も語っていたことだ。後楽園で有観客興行ができない場合「では他の会場で」で本当にいいのかどうかも考えてしまうと言う。後楽園ホールは通称「格闘技の聖地」。観客にとってはどの席からも見やすく、選手からすると観客の視線を近くに感じるという。「後楽園の試合が一番緊張しますよ」と言っていたのは現役時代の魔裟斗だ。その分、会場の一体感も生まれやすい。

【次ページ】 「私、1試合のために2回も減量するんですけど(笑)」

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