初代タイガーマスクは怒りの感情をムキ出しに

　デビュー以来、タイガーマスクは毎週次々と現われる敵を華麗な技で倒していく完全無欠のヒーロー。ある意味、子供向けのヒーロー番組の主人公と同じでもあった。しかし、小林という宿敵を得たタイガーは、破られたボロボロのマスク姿で怒りの感情をムキ出しにしながらケンカ腰で闘う、それまでとは違うスタイルに変化。生身の人間としての魅力を見せはじめ、子供だけでなく、高校生・大学生や大人のファンも獲得していく。こうして幅広い層を魅了したからこそ、初代タイガーマスクは、いまだに伝説として語り継がれているのである。

　タイガーマスクは83年8月、突如引退（新日本プロレス離脱）を宣言。佐山が新日本プロレスでタイガーマスクとして活動した期間は、わずか2年4カ月足らずだった。そしてその後、第一次UWFを経て、自身が考案した新格闘技シューティング（修斗）の確立と普及に努めた。これが現在世界中に広まったMMA（総合格闘技）の源流でもある。

　初代タイガーマスク登場以降、プロレスはガラリと変わった。そして格闘技界では“総合”という概念が生まれた。佐山サトルほど、プロレスと格闘技の両方に多大な影響を与えた人もいないだろう。すべては佐山サトルから始まったのだ。