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ルイス・ハミルトン「どう立ち上がったかが大切なんだ」…“ミスで9番手”からの2位浮上、逆境で見せた「王者の風格」
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Images
posted2021/04/23 17:01
序盤に接触もあった勝者フェルスタッペンを、レース後のコメントでは素直に祝福したハミルトン
自分自身を取り戻したハミルトンは、バックギアを使用して自力でグラベルを脱出し、レースに復帰。しかし、コースに戻るために時間を要したハミルトンは7番手までポジションを落とし、さらにタイヤバリアに接触して壊れたフロントウイングを交換するためにピットインし、9番手へ。
するとここでバルテリ・ボッタス(メルセデス)とジョージ・ラッセル(ウィリアムズ)のクラッシュが起こり、レースは赤旗中断となる。中断の最中、コクピットを降りたハミルトンはリラックスしていた。
「子供のころ、家の近くに古びたゴーカート場があって、いつもそこで後方からスタートしていたんだ。だから、挽回するのは得意なんだ」
赤旗後に再開されたレースではコース上のだれよりも速いペースでポジションアップし、最終的に2位でチェッカーフラッグを受けた。
開幕2連勝は逃し、表彰台の頂点の座は優勝したマックス・フェルスタッペン(レッドブル)に譲ったものの、ハミルトンは選手権リーダーの座は堅持して、イモラをあとにした。
王者が語る競技者の心得
ハミルトンは言う。
「人生において、挑戦していれば、どんな形であれミスや事故、あるいは逆境が訪れる。それとどう向き合い、どのようにして乗り越えるか。それが重要なんだ。自分を評価するのはミスではない。どのように倒れたかではなく、どう立ち上がったかが大切なんだ」
エミリア・ロマーニャGPでは、角田裕毅もミスを繰り返した。角田が所属するアルファタウリのフランツ・トスト代表は、こう言う。
「ユウキに限らず、F1ドライバーというのはだれもが成長を止めてはいけない。2005年と06年の王者であるフェルナンド・アロンソしかり、2010年から4連覇したセバスチャン・ベッテルも、そして現在7冠の最強ドライバーであるルイス・ハミルトンですら、毎年成長している。だから、学習することを止めてはならない。若いドライバーなら、なおさらだ」
大切なことはミスをしたかどうかではない。そのミスから何を学び、どう立ち上がるか。5月2日決勝のポルトガルGPを楽しみに待ちたい。