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【メジャー3年目】菊池雄星の「粘り」を生む新フォーム…ヒントは“岩隈久志の立ち姿”と“モンスター井上尚弥の平行移動”?
text by
木崎英夫Hideo Kizaki
photograph byGetty Images
posted2021/04/20 11:01
ゆったりと上げた右足を一度止め、反動を使って踏み込む新フォームに自信を深める菊池
「井上尚弥の試合を観戦したのですが、あえて3階席のチケットを買いました。なぜかといえば、世界でも屈指のボクサーが、相手に対してどう動いているのかを見たかったからです。並みのボクサーは動きが雑ですが、井上は違いました。絶対に体の中心がぶれません。どんな状況でも一定の距離を取って相手と平行に動いているんです。僕が大切にしている、首を前に出さず、頭と背中の2つを軸にして打者に真っすぐなラインで踏み込んでいくというイメージは彼の試合を見てさらに強くなりました」
一撃必殺のパンチを打ち込む井上が醸す独特の間と体のバランスに感じ入った菊池は、日本の伝統芸の一つ、「能」にも目を向けていたことを明かした。
「一時期、僕は能を鑑賞しました。演じる人は絶対に上体を揺らさず中腰の姿勢を保って歩きます。"すり足"の由来はそこから来ていると聞きますが、ゆっくりと安定した動きを支える下半身は相当の鍛錬がないとできません。その動きを止めずにセリフも言うのですから、並大抵ではないです」
思いもよらぬ話の発展は奔放にみえるが、追い求めたフォームと相関の糸でしっかりと結ばれている。
「型」を吸収し、構築する「形」
いくつもの「型」を吸収して理想の「形」を構築した菊池は、あの日のフォーム談議をこう結んでいる。
「いいフォームでも勝てない。理にかなっていなくても勝てる。僕はそのどちらでもない投手になりたい」
真価を問われるメジャー3年目。結果は追い求めても、菊池雄星が「過程」を大事にする心を失うことはない。