炎の一筆入魂BACK NUMBER
カープ大瀬良大地、エースとして取り入れた“黒田博樹と同じ姿”とは 右肘手術も“2015年の涙”も進化の土台【今季30歳に】
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byKyodo News
posted2021/04/15 06:00
カープのエースとして風格が漂う大瀬良大地(左)。3試合に登板して防御率0.89と抜群の安定感だ
右肘手術も「後々良かった」と思えるように
「今、あらためて思うことはないですよ。そうやって2年目のシーズンが話題に挙がった流れで思うことはあっても、やっている本人は、そのときの現実がすべてですからね。中継ぎを経験したことによって、いろいろな思いができたし、いろんなことを考えるようになったと思います」
中学時代に初めて右肘にメスを入れたが、それでも左投げで一塁手として試合に出続けた。プロ入り後も挫折や失敗は一度や二度ではない。長いシーズン、順風満帆にいくことなどない。何もしなければ苦い記憶のままでも、自らの言動で消化することはできる。挫折からはい上がるだけでなく、挫折をへて、いつも強くなって帰ってきた。
「あのケガがあったから後々良かったとか、あのとき頑張れたから自信になったとか。そう思えるように。マイナスで終わらせたくない」
昨年の右肘手術からも、見事に復活した。V字回復というよりも“チェックマーク”のように、さらに上昇する進化を遂げた。
森下の体の使い方にヒントを得て
また手術を機に、30歳となるシーズンを前に投球スタイルの転換を図った。
これまでは体重を増やして球に重みを伝えるアプローチで取り組んできたが、そのスタイルでは身体に負担がかかる。この先の野球人生を考えた方向転換でもあった。細身ながら150キロ超の直球を投げ込む森下の体の使い方にヒントを得た。トレーナーらに相談し、「チャレンジ」と言うほど根本から変える決断をした。
昨年9月、手術を見据えた2度目の出場登録抹消から肉体改造に取り組んだ。リハビリ組のランニングメニューが終われば、二軍選手のランニングメニューにも参加。食事制限も徹底。ストイックなまでの姿勢で1月までに体重を約5キロ落とし、筋肉量を上げた。
数年前から周囲からエースと呼ばれるようになり、意識も変わった。今年は特に表情から感情の揺れがうかがえない。ピンチを招いても、ピンチを切り抜けても、相手を抑え込んでも、マウンドでは威風堂々としている。