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大学野球で異例の「3番・ピッチャー」…日体大に現れた期待の左腕、打者では吉田正尚クラスに?【脚力もプロ級】
posted2021/04/13 11:01
text by
西尾典文Norifumi Nishio
photograph by
PABB-lab
4月10日に開幕した首都大学野球リーグ1部。東海大と日本体育大の試合が行われた大田スタジアムには、好選手が揃う両校だけに多く報道陣やスカウトが集結していた。筆者もその一員だったが、試合前に配られたメンバー表を見て、思わず驚きの声を上げてしまった。
日体大・矢澤宏太(3年・藤嶺藤沢)が3番・ピッチャーとしてスタメンに名を連ねていたからである。
高校野球では「エースで4番」というケースは珍しくない。だが、大学野球では東京六大学野球と関西学生野球以外は指名打者制を採用しており、投手が打席に立つケースはほとんどない。まして、首都大学野球は毎年のようにドラフト上位で指名される選手を輩出している全国でも屈指の強豪リーグである。その公式戦で投手がクリーンナップを任されるというのは、異例中の異例である。
昨秋は外野手としてベストナイン
矢澤のプレーを初めて見たのは、2018年4月8日に行われた高校野球神奈川県大会、対慶応藤沢戦だった。この試合で矢澤は背番号1をつけて3番・ピッチャーとして出場。6回コールドの15-0と圧勝劇の主役を担っていた。投げては最速144キロをマークし、被安打0、10奪三振と完璧に相手打線を抑え込み、打っては左中間へのホームランを含む2安打3打点と見事な活躍。
ただ、当時のプロフィールは172cm、61kgとかなり小柄だったということもあり、高校卒業時にプロ志望届は提出したものの指名は見送られている。
大学進学後はまず野手として頭角を現し、昨年秋は外野手としてベストナインも獲得している。一方で投手としての出場は通算3試合にとどまっており、この春から本格的に主戦となった。これまでの登板時は打席に入ることはなかったため、開幕戦での「3番・ピッチャー」という起用には本当に驚かされた。
さらに驚いたのは、この日の矢澤がその起用が間違っていなかったことを証明するプレーを見せつけたことだ。