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白血病から2年で復活… 池江璃花子の“天性の才能”と“北島康介との共通点”とは【元五輪スイマー伊藤華英が解説】
text by
伊藤華英Hanae Ito
photograph byKyodo News
posted2021/04/03 06:01
ジャパンオープンでの池江璃花子。日本選手権でどのような泳ぎを見せてくれるか、楽しみでしかない
今も池江に残っている「天性の才能」とは
アテネ、北京と五輪連覇を達成した頃、康介さんは常にベストの形を見つけ出して泳いでいた印象です。だからこそあれほどまでの長期間、強さを持続できたのだと思います。
池江選手にもそういったアップデートする能力、それに加えて「強くなりたい」と優先的に考えられるメンタリティがあるからこそ、これほどの短期間で競技力を取り戻したのでしょう。
もちろん、病気以前から池江選手が持っていた天性の才能が、今も残っていることも復調の要因の1つでしょう。
肩甲骨と足首がすごく柔らかいため、水中での推進力の高さが維持されています。なめらかで水に乗っていくような泳ぎは相変わらずですし、先ほど説明した水をかく力も強くなっています。
そして筋力がまだ戻り切っていない中で「次のステージに向かう感覚」を見つけ始めています。
客観的に数字を見て注目したいのは100m自由形
日本選手権でエントリーした4種目のうち、どれが要注目か、ですか? もちろん全てだと思うんですけど――最も可能性があるという意味では100m自由形でしょうか。
この種目は1位から8位まで接戦なのですが、2020年4月~今年2月までの日本ランキングで、池江選手は9位にあたる55秒35をマークしています。今大会は54秒台前半の争いになってくると思うんですけど、この記録にどこまで迫ってくるのか。結果によってはリレーの日本代表に入れる可能性も出て来るかと思いますので。
客観的に数字を見て自由形に注目しましたが、彼女の中ではバタフライも頑張りたいと思っている種目だと思います。そう考えるとやっぱり、4種目全部、見逃さないでください(笑)!
白血病という究極の試練を味わって、ゼロどころかマイナスまでいった身体の状態をプラスに持ってきている。そしてさらにその上の段階を目指している。そういった池江選手の過程を見られていることが、私たちにとってとても貴重なのだと思います。
彼女の運命はきっと、本当に特別なものだと思います。東京オリンピック出場への期待が高まっているようですが、まずは2021年時点での池江選手の泳ぎと笑顔を見られる幸せや喜びを、ぜひ1人でも多くの人に感じてもらいたいなと心から思っています。(構成/茂野聡士)
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