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松井大輔39歳が語る“同世代の引退”と“年齢という敵”「カズさんがいなければ、とっくに引退している」
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byGetty Images
posted2021/03/28 11:03
松井大輔が慕う三浦知良との2ショット
若いころのように遠い未来の目標は立て、逆算するような生き方はできなくなる。数年後は引退しているのかもしれないのだから。もちろん、引退後の姿から逆算し、準備をすることもできるが、現役選手として、それを受け入れづらいという選手もいる。だから、今日という1日にフォーカスして力を尽くそうと考えるベテランは多い。
「1年1年というか1日1日。怪我とかいろんな敵がいるから、それを倒していく作業を毎日するしかなかったというのはあるかもしれない」と松井は振り返る。そして今。ベトナムという新しい環境で、新しい自分の可能性を感じている。
「ベトナムのサッカー選手の地位を上げていきたい」
選手の身体能力を上げ、サッカーの技術や戦術を磨くことだけが、強化ではない。当然プロ化したからといって、それだけではベトナムサッカーの底上げにはつながらない。在籍する選手一人ひとりの意識改革があってこそ、現状が変わる。サイゴンFCのビンCEOが掲げる目標と松井が果たすべき役割を考えると、30年前の日本、Jリーグ黎明期を思い出す。
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「欧州サッカーやJリーグ、ベトナム代表は人気だけど、国内リーグはそれほどでもないし、ベトナムのサッカー選手の地位はそんなに高くない。だけど、選手たちの意識を変えること、彼らがプロ選手としての振る舞いを知ることで、地位向上につながるだろうし、子どもたちの憧れの存在になれると思っている」
その一助となりたいと松井は考えている。それが現在の彼のモチベーションであり、現役続行のエネルギーなのだ。
変わらぬ信念「人と同じ道は歩みたくない」
「風の時代が始まったのって、知っている? 僕は酉年だからさ。風に乗って、飛んでいる。最終地点がどこなのかはわからないよ。今からどうなるかなんてわからないでしょう。でも風だから、どこへも飛んでいける。風に身を任せるだけなんだよ(笑)」
取材の終盤、突然そう切り出した。
西洋占星術において、2020年12月に、約200年間続いてきた地の時代が終わり、風の時代が始まったと言われている。人々の価値観や時代の空気が変わるということだ。「西洋占星術と干支との関係はわからない」と言いながらも松井は風の時代を歓迎している。しかし、時代に関係なく、彼は風に身を任せて生きているように見える。
「人と同じ道は歩みたくない」
彼の信念はこれからもブレることはないだろう。新しい姿を見せてくれるに違いない。
(【前編を読む】39歳松井大輔が明かす“ベトナム電撃移籍”の真相「先生として、プロとしての振る舞いなどを伝えて欲しいと」へ)