草茂みベースボールの道白しBACK NUMBER
中日復帰・福留孝介43歳が“代打本塁打”…思い出すWBC韓国戦の劇的決勝2ラン「泣いてはいない。いないですけど…」
posted2021/03/23 11:03
text by
小西斗真Toma Konishi
photograph by
Kyodo News
中日の福留孝介がオープン戦最終戦の日本ハム戦(バンテリンドーム)で、本塁打を放った。14年ぶりに復帰した古巣での初安打が右翼スタンドに吸い込まれ、9946人の観客は大いに喜んだ。
NPBで通算281本塁打の福留だが、代打でとなると2本のみ。中日時代の2001年8月14日に入来祐作(巨人)から、阪神に在籍していた17年7月29日には田島慎二(中日)から打っている。わずか281分の2。しかし、ここに含まれない「1本」が、今もなお野球好きの心に残っているのではないだろうか。
今回の代打本塁打が3月21日。そしてあの「1本」は2006年3月18日だった。
王監督はビールを27本飲み干した
第1回WBC。東京での第1ラウンド、アナハイムでの第2ラウンドで計3敗しながら、奇跡的に決勝ラウンドに進出した。すでに敗退が決まっていたメキシコに、米国が負けることが絶対条件。日本代表の王貞治監督は、無駄足となるかもしれぬサンディエゴへの移動後、関係者と食事に出かけた。
中華料理店で米国製のビールを9回のアウト数になぞらえて27本飲み干した。食事の最後に出たフォーチュンクッキーでは「Your perspective will shift(未来は明るい)」と書かれていた。その言葉通り、未来は開けた。メキシコが2対1で米国を破り、王監督も「99%ないと思っていた」決勝ラウンド進出が転がり込んできた。米国との明暗を分けた失点率は、わずか0.01差だった。
あるはずのなかった準決勝。相手は第1、第2ラウンドともに苦杯をなめさせられた韓国だった。イチローの「向こう30年は……」発言にヒートアップした宿敵への3連敗は許されない。上原浩治(巨人)を先発マウンドに送った一戦は、またしても手に汗握る投手戦となった。
それまで状態が上がらず、この試合で福留はベンチスタートとなっている。しかし王監督からは「必ず大事な場面で行くから」と言われていた福留は、静かに出番を待った。