草茂みベースボールの道白しBACK NUMBER
中日復帰・福留孝介43歳が“代打本塁打”…思い出すWBC韓国戦の劇的決勝2ラン「泣いてはいない。いないですけど…」
text by
小西斗真Toma Konishi
photograph byKyodo News
posted2021/03/23 11:03
3月21日、日本ハムとのオープン戦で5点リードの展開で代打2ランを放った福留。復帰した古巣・中日でベテランの存在感を見せている
「野球人生でも一番といっていいホームラン」
スコアレスで迎えた7回。先頭の4番・松中信彦(ソフトバンク)が二塁打で出る。気迫のヘッドスライディングに、日本ベンチは沸いた。韓国は当時ロッキーズに所属していた、右サイドハンドの金炳賢をマウンドに送った。続く多村仁が三振に倒れたところで、王監督が立ち上がった。今江敏晃(ロッテ)の代打に福留。「任せたぞ」。一言だけ声をかけられている。
仕留めたのは89マイルのフォーシーム。MLB有数のピッチャーズパークとして知られ、とりわけ左打者泣かせの風が吹くペトコパークの右翼スタンドに、均衡を破る代打決勝2ランを突き刺した。
「泣いてはいない。いないですけど、涙が出そうになった。野球人生でも一番といっていいホームランです」
韓国を倒し、キューバにも打ち勝って世界一。1996年のアトランタ五輪で銀メダル、2004年のアテネ五輪で銅メダルを手にした福留にとっても、ついに勝ち取った「金メダル」だった。
日本球界最年長選手の強さは健在
当時の日本代表メンバーで、今もNPBでプレーするのは松坂大輔(西武)、和田毅(ソフトバンク)、青木宣親(ヤクルト)と福留の4人だけ。思えば2006年は「マー君」と「ハンカチ王子」が夏の甲子園で死闘を繰り広げる年でもあった。
2021年のホームランも、松中と同じ4番打者のダヤン・ビシエドが二塁打を打った直後の代打。打ったのはやはり右サイドハンドの秋吉亮で、同じ右翼スタンドに飛び込んだ。15年と3日前。サンディエゴの春、あの熱狂と歓喜を思い出させる軌道だった。
野球界の風景もずいぶん変わった。4月に44歳になる福留は、日本球界最年長選手である。開幕一軍切符をつかみ、まずは勝負の代打としてスタンバイする。勝負強さ、スイングスピードは健在。自己3本目の代打アーチは、4月26日の誕生日までに見られる可能性も大いにありそうだ。