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プロ野球スカウト「165cmは小さいからなぁ…」社会人野球で発見した“ドラフト注目”2人のピッチャー
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph bySankei Shimbun
posted2021/03/24 17:04
ホンダ所属。高卒3年目の右腕・米倉貫太投手(184cm86kg)もプロ注目の1人だ(写真は埼玉栄時代のもの)
大丈夫なの? 学生時代から顔見知りのチームメイトに思わず確かめたら、
「あいつ、まだほとんど打たれてないっすよ。めちゃめちゃ度胸いいっすから」
ここはあいつしかいないっす……なんの心配もない顔でマウンドを見つめているなと思ったら、あっという間に3人のタイミングを崩して帰ってきた。
計算ずくで、ボール球3つ投げた?
この日対戦する鷺宮製作所打線は、快足の巧打者あり、広角への強打者あり、パワーヒッターありの手ごわい打線。なのに、立ち上がりから平然と投げ進める。
用心深く投げているのか、やはり公式戦初戦先発の力みのせいか、球数は多いが、カウントが不利になってから投げるボールが小憎らしいほどきびしい。
いきなり3ボールにしたかと思うと、低めいっぱいの140キロ前後の速球2つでフルカウントに持ち込んでから打ち取ったりすると、まさか計算ずくで最初にボール球3つを続けたんじゃないだろうね……そんな勘繰りすらしてみたくなることも。逆に、走者を許した直後に2球で追い込んでおいて、3球勝負のシンカーでもくろみ通りの遊ゴロ併殺で切り抜けてみせる。
もう5年、6年と社会人野球を経験している右打者が、高めのボールで空振り三振しているのは、リリースポイントが見えないのと、速球にそれだけの勢いがあるからだ。
プロ野球スカウト「165cmは小さいからなぁ……」
ボールが先行したカウントで、きびしいコースに速球、カットボール、スライダー、チェンジアップの持ち球すべてを配せる技術もさることながら、どんなカウントでも気持ちの浮き沈みを表情、態度に出さない肝っ玉の太さ。見ているこっちがスッとするのだから、バックを守るチームメイトはどれほど胸がすくことか。